ブックタイトル日本結晶学会誌Vol59No6

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概要

日本結晶学会誌Vol59No6

日本結晶学会誌59,277-278(2017)最近の研究動向Al基I相準結晶の近似結晶の基本構造:擬マッカイクラスター(pseudo Mackay Cluster)東北大学多元物質科学研究所志村玲子Rayko SIMURA: Pseudo Mackay Clusters in the Al-based Approximants for the I PhaseQuasicrystals三元系合金Al-(Pd,Cu,Ni)-(Ir,Rh,Ru,Fe,Co,Re,Mn)のAl 50 mol%以上の組成領域には,D相,I相と呼ばれる準結晶のほか多種の近似結晶が晶出する.1)著者が所属する研究グループは,単結晶X線構造解析を用いて,立方晶C-AlRuNi,2)C1-AlPdFe,3)C2-AlPdFe,3),4)F-Al(Ge)PdCo 5)および六方晶R-AlPdCo 6)などいくつかの近似結晶の結晶構造を決定してきた.本報では.これらの一連の構造解析結果から見えてきたI相近似結晶相の構造と正二十面体対称クラスターの特徴について概説する.図1に,C-AlRuNi 2)の構造を示す.遷移金属原子に着目すると,C相の構造は遷移金属原子の正二十面体配列などから構成される遷移金属フレームワークの隙間にAl原子が分布していると理解できる(図1).同様にほかの近似結晶相の結晶構造における遷移金属原子の分布は,1遷移金属原子を頂点とした正二十面体ユニットと2孤立する遷移金属原子(遷移金属原子を中心にもつAl原子の正二十面体ユニット)という2つのユニットの組み合わせで結晶構造を理解することができる.一例として,図2にR相およびF相の結晶構造を示す.遷移金属正二十面体ユニットの隙間に位置しているAl原子の配列に着目してみよう.本稿で紹介するC,C1,C2,FおよびR相近似結晶には【type A】[i]中心原子→[ii]Al原子と遷移金属原子の体心立方(BCC)配列→[iii]遷移金属正二十面体→[iv]Al原子の二十・十二面体(図3),【type B】[i]中心原子→[ii]Al原子の多面体→[iii]遷移金属正二十面体→[iv]Al原子の二十・図2 RおよびF相の結晶構造.(Structures of R and F-phasesin the Al-Co-Pd-(Ge)system.)両者とも遷移金属正二十面体とAl正二十面体の連結構造として理解できる.図1C相の結晶構造と遷移金属フレームワーク.(Structureof C-phase in the Al-Ni-Ru system and the distributionof transition metals.)図3R相の擬マッカイクラスター(type A pMC).(Shellstructure of a pMC in the R-phase.)日本結晶学会誌第59巻第6号(2017)277