ブックタイトル日本結晶学会誌Vol59No6

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概要

日本結晶学会誌Vol59No6

クリスタリットえながらくり返し変換するところに特徴がある.(慶應義塾大学自然科学研究教育センター大場茂)ゾーンケ群Sohncke Groupsメタ磁性Meta Magnetism反強磁性体または常磁性体に磁場を印加していくとある磁場で急激に磁化が増大する現象を指す.反強磁性体の場合,特に磁気異方性の大きな系に対して磁場をかけていくと階段状に磁化増大するもので,外部磁場により磁性体内部の反強磁性相互作用に打ち勝って強磁性磁化が出現する.一方常磁性体の場合のその機構は完全に解明されてはいないが重い準粒子の状態密度や磁気的相互作用の磁場変化などが原因であると考えられている.((公財)高輝度光科学研究センター水牧仁一朗)門脇ウッズプロットKadowaki Woods Plotsフェルミ流体においては電気抵抗が温度T 2に比例することが知られていて,この比例係数をAと記す.重い電子的振る舞いを示す物質群において,この比例係数Aと電子比熱係数γを対数プロットにおいて直線関係が普遍的に成り立つ.4f電子状態の縮重度によって分類された拡張された門脇ウッズプロットも提案されている.((公財)高輝度光科学研究センター水牧仁一朗)双対空間法Dual Space MethodsX線構造解析において初期構造モデルを求めるために,実空間すなわち電子密度と逆空間つまり構造因子の間をフーリエ変換と逆フーリエ変換によって頻繁に相互変換させ,適切な修正を加えながら収束させていく方法.shake-and-bakeとも呼ばれる.実空間における束縛は電子密度が離散的な正の山からなり負の谷は生じないこと,そして逆空間における束縛は特定の反射間の位相関係式が成り立つことである.計算の開始は実空間でも逆空間でもよく,その初期モデルの設定や計算途中の修正については種々の方式が考案されている.なお,古典的な直接法では,有望な位相セットを求めてからフーリエ変換を1回だけ行っていたが,双対空間法では修正を加キラルな分子をその鏡像異性体に変換するような対称要素,つまり対称心,鏡面,回反軸や映進面をもたない空間群をさす.230種の空間群のうちゾーンケ群は65種であり,その代表例はP2 1やP2 12 12 1である.通常のタンパク質など,対掌体のうちの一方しか含んでいないキラルな構造の空間群はゾーンケ群のいずれかに限られる.なお,この用語はこれらの空間群を理論的に導出したL.Sohnckeに由来し,H. D. Flackによる造語である.(慶應義塾大学自然科学研究教育センター大場茂)パターソン重ね合わせ最小関数Patterson Superposition Minimum Functionパターソン関数の中の1つのピークを選び,そのベクトルに沿って原点をずらしてパターソン関数を重ね合わせ,各グリッド点における2組の値のうち小さいほうを選ぶことで得られる関数.パターソン関数のピークの数は,単位胞に存在する原子数をNとして原点以外にピークが重なっていないと仮定するとN 2-Nとなる.また,パターソン重ね合わせ最小関数のピークの数は2N-2になる.これは本来の構造にその反転した像が加わったものに相当する.もし,2つの異なる原子間ベクトルが重なったピークを選んでパターソン重ね合わせ最小関数を計算した場合,重なった2つの部分構造とそれらが反転した像となる.(慶應義塾大学自然科学研究教育センター大場茂)直接法Direct MethodsX線回折法において,指数が特別な関係にある反射間の位相の関係式をもとに,各反射の位相を統計的に推定する方法.その根拠は構造因子の振幅に正しい位相を割り当てたとき,それをフーリエ変換して得られる電子密度は正のピークが離散的に現れ,負の谷は生じないはずだということである.ただし,実際の計算にあたっては通常の構造因子Fの代わりに規格化構造因子Eを用いて,構造因子の振幅と位相の関係を取り扱いやすくする.位相の精密化には,3反射位相関係式に基づくタンジェント式などを用いる.ある程度の分解能の反射データが得られれば,低分子については直接法によって構造がほとんど解けるようになった.ただし,独立原子数が増えるほど,位相関係式が成り立つ確率が下がるため,生体高分子を直接法で解くのは困難となる.(慶應義塾大学自然科学研究教育センター大場茂)320日本結晶学会誌第59巻第6号(2017)