ブックタイトル日本結晶学会誌Vol59No6

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概要

日本結晶学会誌Vol59No6

日本結晶学会誌59,281-282(2017)最近の研究動向PF構造生物学研究ビームラインにおけるデータベース開発高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所構造生物学研究センター山田悠介Yusuke YAMADA: Development of Database System for Structural Biology Beamlinesin the Photon Factory1.はじめに構造生物学研究において放射光利用は身近なものである.タンパク質結晶構造解析においては,今日ではほとんどの回折データ測定が放射光ビームラインにおいて行われているといっても過言ではなく,また近年,溶液構造解析の重要性が再認識され,溶液散乱ビームラインの需要も高まってきている.これらのビームラインでは,ビーム性能の向上,検出器を始めとした測定機器の高性能化,そして試料交換システムに代表される測定の自動化によって,利用者が測定する試料数やそこから得られるデータの数は膨大となり,それらをデータベース化し管理するシステムが重要となってくる.本稿では高エネルギー加速器研究機構の構造生物学研究センター(SBRC)におけるこれらデータベース開発について述べる.2.PXビームラインの実験データベースPReMoの開発2.1 PReMo開発の背景PReMoとはPF Remote Monitoring systemの略称で,その名が示すとおり,PFのタンパク質結晶構造解析(PX)ビームラインにおいて行われる実験をほぼリアルタイムで所外から閲覧できることを目的に2006年頃より開発が始められた.そのなかで所外から実験を閲覧する手段として,Webを用いることが適切であるとの考えから,PXビームラインで行われる実験の条件および結果をデータベース上に登録し,それを研究者がWebで閲覧するという構成が採用された.これがPFのタンパク質結晶構造解析ビームラインにおけるデータベース開発の始まりである.PXビームラインで行われる実験をすべてデータベース上に記録させるため,ビームライン制御にかかわる通信をモニターし,実験が行われる度に装置の状態,実験条件などの情報がダンプされる.そして,ダンプされた情報に実験データが付加されデータベースへと取り込まれ,これらの情報がWebを介して閲覧することができる(図1左).1)2.2 XMLデータベースの採用PReMoはRCM System(https://www.i4s.co.jp/rcm/rcmabs.html)と呼ばれるミドルウェアを用いて開発されている.このミドルウェアの大きな特徴はバックエンドのデータベースとしてXMLが用いられていることである.XMLはさまざまな情報を階層的に表現することを得意とする.一方でビームラインにおける実験も,例えば図2左のように,あるビームタイムにスナップショット測定や回折データセット測定といった測定を実施した.各測定において一次処理として,スナップショット測定では回折イメージの評価を行い,データセット測定では回折イメージの評価とデータ処理(指数付け,強度積分/補正)を行った.さらにデータ処理については二次処理として位相決定を行った.というように階層的に表すことができる.したがって,実験の情報はXMLを用いることで自然に表すことが可能である(図2右).さらにXMLデータベースはリレーショナルデータベースのようにあらかじめデータベース構造を設計する必要もなく,データベース運用中にデータベース仕様を変更することも可能で,柔軟な運用が可能である.例えば,PReMoの場合,開発当初は測定中に試料を並進させるようなグリッドスキャン,ヘリカルデータ測定のような実験が存在しな図1PReMO(左)およびPXS-PReMo(右)のWeb閲覧画面.(Web interface of PReMo(left)and PXS-PReMo(right).)日本結晶学会誌第59巻第6号(2017)281