ブックタイトル日本結晶学会誌Vol59No5

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概要

日本結晶学会誌Vol59No5

ネスポロマッシモD4D3 D5D2 D6D1図6 SrTiO 3の相転移によるドメイン構造のイメージ.同色のドメインは同じドメインタイプに属する.編集部注:カラーの図は電子版を参照下さい.の操作を連続施行することになる.例えば,D3とD6の関係は(D3→D1)→D6=(D1→D3)-1→D6となるので(3 -[111])-1とt(001)の組み合わせでできているので方向も位置も異なるので双晶の貢献と反位相の貢献も存在する.Diはドメインではなく,ドメインタイプを示す.なお,反位相ドメインを関連付ける並進操作は構造因子の位相に影響を与えるため回折図形では反位相ドメインの存在は現れず,双晶ドメインしか見えない.反位相ドメインは透過型電子顕微鏡で観察できる.5.席対称群(安定群)とワイコフ位置International Tables for Crystallography volume A(文献5))の利用者は席対称群とワイコフ位置を見慣れている.しかし,特に後者の厳密な定義を理解する人は少ないと言えるだろう.代数学の世界で席対称群は安定群という.その原子位置(空間中の位置)を安定(不変)にするからである.ある位置Xを不変にするのは空間群Gの部分群Sである.これは席対称群といい,空間群の一部の操作で形成されるため,線型部分(行列)と並進部分(ベクトル)でできている.席対称群が恒等操作(I|0)しか含まない場合,Xは一般ワイコフ位置に属するという.それ以外の場合,Xは特殊ワイコフ位置に属するという.図7は,Pbam空間群タイプの投影を示している.単位胞内の4本の2回回転軸上の位置の席対称群を考えてみよう.原点を通る軸の座標は0,0,zである.この座標を不変にするPbamの部分群は恒等操作のほかに2回回転操作も含むに違いない.しかし,そのベクトル部分を各々の2回回転軸に対して考える.? ?1 0 0??0?? ? ? ? ??W 1 =0 1 0; w 1 =0?0??0??? ? ? ? ?0 0 1??? ? 0?? ?W0+ w =0→??? z??? ? z?? ? 1 0 0??0?? ? ? ? ? ?W2 = ? 0 1 0?;w2=0???0 0 1??? ?0????同様に,ほかの2回回転軸に関しては以下のように記述できる.? ?1 0 0??0?? ? ? ? ??W1=0 1 0; w 1 =0?1 1 2 ? ? 2 ??? ? ? ? ?0 0 1??? ? ?0??W0 + w =0→??? z ? ?? ? z ? ? ? 1 0 0??1?? ? ? ? ? ?W2 = ? 0 1 0?;w2=0?? ? ? ??0 0 1? ?0???? ?1 0 0??0?? ? ? ? ??W1 =0 1 0; w1=0? 0 ? ? 0 ???0 0 1?? ?W 1? ?2 w 1? ? ? ? ?0?+ =2→??? z ? ?? ? z ? ? ? 1 0 0??0?? ? ? ? ? ?W2= ? 0 1 0?;w2=1?? ? ? ??0 0 1? ?0???? ?1 0 0??0?? ? ? ? ??W1=0 1 0; w 1 =0?1 1 2 ? ? 2 ???0 0 1??W 1? ?2 w 1? ? ? 0??? ?+ =2→??? z ? ?? ? z ? ? ? 1 0 0??1?? ? ? ? ? ?W2 = ? 0 1 0?;w2=1???0 0 1??? ?0????この結果をサイズ記号でまとめてみよう(Sは席対称群).S(00z):({1|000},{2 001|000})S(?0z):({1|000},{2 001|100})S(0?z):({1|000},{2 001|010})S(??z):({1|000},{2 001|110})2回回転操作のベクトル部分が異なるため上記の席対称群はすべて異なるが共通の線型部分をもっているため2という点群と同型である.実はこの情報のみInternational Tables for Crystallography volume Aに..2という記号として掲載されているのである.本稿第2章では,共役という概念を説明した.この共役という概念は,ワイコフ位置の定義にも必要である:「空間中の位置の席対称群が空間群の共役部分群である場合,その位置は同一のワイコフ位置に属する」.より具体的には,S(X)とS'(X')はS'=GSG -1という関係を満たすならXとX'は同じワイコフ位置に属するということである.先の例を再び考えてみよう.Pbamの無限個の対称操作は以下のパラメトリック表現ができる(p,q,rは整数).{1|pqr},{2 001|pqr},{2 010|p+?q+?r},{2 100|p+?q+?r},{1|pqr},{m 001|pqr},{m 010|p+?q+?r},{m 100|p+?q+?r}恒等操作は単独で共役類を形成するのでどの対称操作においても自己共役である:218日本結晶学会誌第59巻第5号(2017)