ブックタイトル日本結晶学会誌Vol59No1

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概要

日本結晶学会誌Vol59No1

日本結晶学会誌59,39(2017)結晶カイラリティの定義に関してロレーヌ大学・CNRS(フランス),CRM2研究室ネスポロマッシモ会誌58巻4号のクリスタリットには,「結晶構造の対称性を記述する全230種の空間群のうち,65種が回映軸をもたないカイラルな空間群である」と間違った記載があった.その後,著者も修正が必要と考え会誌58巻6号に修正が掲載されている.近年本会では,カイラリティの研究が活発になっているので,言葉の定義について整理することは意義があると考え,本記事を談話室に掲載することとした.カイラルな「モノ(object)」の対称性はSE(3)(特殊ユークリッドの運動群)の部分群であり,第一種対称操作(回転操作,並進操作)しか含まない.その「モノ」の性質によって3つのケースを区別する.1),2)1.「モノ」は分子で,「モノ」の対称性はSO(3)(特殊直交群)の部分群である.これは回転操作しか含まない点群である.そして,分子は2つの鏡像異性体(enantiomer)として存在する.2.「モノ」は結晶構造で,「モノ」の対称性は第一種対称操作しか含まない空間群である.これらは65種のソンケ群(Sohncke groups)であり,結晶構造は2つの鏡像体(enantiomorph)として存在する.3.「モノ」は空間群で,「モノ」の対称性はユークリッド正規化群(Euclidean normalizer)である.カイラルな空間群は22種(11対,例P3 1とP3 2)で,そのユークリッド正規化群は第一種対称操作しか含まない.以上の理由により,230種の空間群は208アキラル種および22キラル種に分けられる.なお,カイラルな結晶構造は65種のソンケ群に結晶化できるが,これらのうち22種はカイラルで,43種はアカイラルであると理解すべきである.日本結晶学会誌58巻4号の間違いは,ソンケ群という用語を使えば簡潔かつ明瞭に修正できる.文献1)H. Flack: Helv. Chim. Acta 86, 905(2003).2)M. Nespolo: Cryst. Res. Techn. 50, 413(2015).日本結晶学会誌第59巻第1号(2017)39