ブックタイトル日本結晶学会誌Vol59No1

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概要

日本結晶学会誌Vol59No1

SACLAのビームライン・実験装置の概要レーザーをベースとしたもので,モード同期オシレータとチャープパルス増幅器により,発振波長800 nmにおいて数mJの出力が得られる.さらに,光パラメトリック増幅器を用いることで赤外~紫外領域の光を供給することも可能である.レーザーの詳細な仕様は,SACLAのホームページで確認することができる. 26)4.2.6データ収集システムSFX実験ではパルスごとに回折像が取得され,毎秒数ギガビットのデータが生み出される.このような膨大な量のデータが,SACLAのデータ収集システムによって処理されている. 25)また,限られたビームタイムの中で効率的に実験を進めるためには,測定と並行して迅速にデータを解析できる環境が必要である.例えば,ヒット率をモニターすることで,最適な測定条件の探索に活かすことができる.SACLAのデータ処理環境を利用することにより,ほぼリアルタイムで検出器の出力画像を評価し,ヒット率をモニターすることが可能となっている. 40)また,回折データを集積している間に解析を行い,構造決定に十分な統計精度に達したかどうかを見極めることも重要である.5.おわりに本稿では,SACLAの硬X線FELビームラインを概説するとともに,SFX実験への活用例を中心に主要な実験装置を紹介した.今後も成果拡大のため,継続的にビームラインの高度化が行われる.例えば,利用機会の拡大を目指し,BL2とBL3の並行利用を本格的に実施するための改造と試験が実施されている.また,軟X線FELビームライン(BL1)の利用も軌道に乗ってきており,原子分子科学,軟X線非線形光学,材料科学といった分野における成果が生まれつつある.実験装置についても,利便性と実験の効率を高めるための高度化とともに,先進装置の開発が行われている.DAPHNISの例のように,手法が確立された実験については効率的な測定システムの整備が必要である.特に,複雑な調整作業が多い時間分解実験を中心に,実験プラットフォームの構築が進んでいる.また,新しい研究分野を開拓すべく,高出力28),29レーザーや分割遅延光学系)などを利用する先進的な実験システムの開発が進んでいる.SACLAの最新情報と研究成果については,ホームページに随時公開されている. 26)この記事で紹介できなかった情報も多く公開されているので,SACLAの利用を検討する際に役立てていただきたい.文献1)T. Ishikawa, et al.: Nat. Photon. 6, 540(2012).2)T. Shintake, et al.: Nat. Photon. 2, 555(2008).3)T. Kimura, et al.: Nat. Commun. 5, 3052(2014).4)K. Tamasaku, et al.: Nat. Photon. 8, 313(2014).5)K. Hirata, et al.: Nat. Meth. 11, 734(2014).6)M. Sugahara, et al.: Nat. Meth. 12, 61(2015).7)K. H. Kim, et al.: Nature 518, 385(2015).8)H. Yoneda, et al.: Nature 524, 446(2015).9)M. P. M. Dean, et al.: Nat. Mat. 15, 601(2016).10)P. Schmuser, M. Dohlus, J. Rossbach and C. Behrens: Free-Electron Lasers in the Ultraviolet and X-ray Regime, 2nd ed., p.165,Springer, Switzerland(2014).11)M. Yabashi, H. Tanaka and T. Ishikawa: J. Synchrotron Rad. 22, 477(2015).12)M. Yabashi, et al.: Phys. Rev. Lett. 97, 084802(2006).13)S. Goto, et al.: Proc. SPIE 6705, 67050H(2007).14)K. Tono, et al.: Rev. Sci. Instrum. 82, 023108(2011).15)Y. Inubushi, et al.: Phys. Rev. Lett. 109, 144801(2012).16)T. Kudo, et al.: Rev. Sci. Instrum. 83, 043108(2012).17)H. Ohashi, et al.: Nucl. Instrum. Meth. A 710, 139(2013).18)T. Koyama, et al.: Opt. Express 21, 15382(2013).19)K. Tono, et al.: New J. Phys. 15, 083035(2013).20)H. Yumoto, et al.: Nat. Photon. 7, 43(2013).21)T. Kameshima, et al.: Rev. Sci. Instrum. 85, 033110(2014).22)H. Mimura, et al.: Nat. Commun. 5, 3539(2014).23)T. Sato, et al.: Appl. Phys. Express 8, 012702(2015).24)T. Katayama, et al.: Struct. Dyn. 3, 034301(2016).25)Y. Joti, et al.: J. Synchrotron Rad. 22, 571(2015).26)http://xfel.riken.jp/index.html.27)M. Kato, et al.: Appl. Phys. Lett. 101, 023503(2012).28)T. Osaka, et al.: Opt. Express 21, 2823(2013).29)T. Osaka, et al.: Opt. Express 24, 9187(2016).30)K. Tono, et al.: J. Synchrotron Rad. 22, 532(2015).31)F. Mafune, et al.: Acta Cryst. D 72, 520(2016).32)T. Kudo, T. Hirono, M. Nagasono and M. Yabashi: Rev. Sci. Instrum.80, 093301(2009).33)R. Neutze, R. Wouts, D. van der Spoel, E. Weckert and J. Hajdu:Nature 406, 752(2000).34)A. Barty, et al.: Nat. Photon. 6, 35(2012).35)H. N. Chapman, et al.: Nature 470, 73(2011).36)S. Boutet, et al.: Science 337, 362(2012).37)D. P. DePonte, et al.: J. Phys. D: Appl. Phys. 41, 195505(2008).38)J. Park, Y. Joti, T. Ishikawa and C. Song: Appl. Phys. Lett. 103,264101(2013).39)M. Sugahara, et al.: Sci. Rep. 6, 24484(2016).40)T. Nakane, et al.: J. Appl. Cryst. 49, 1035(2016).プロフィール登野健介Kensuke TONO公益財団法人高輝度光科学研究センターXFEL利用研究推進室XFEL Utilization Division, Japan SynchrotronRadiation Research Institute〒679-5198兵庫県佐用郡佐用町光都1-1-11-1-1 Kouto, Sayo-cho, Sayo-gun, Hyogo 679-5198, Japane-mail: tono@spring8.or.jp最終学歴:東京大学大学院理学系研究科博士課程専門分野:物理化学現在の研究テーマ:XFELを用いた構造解析法の開発趣味:旅行日本結晶学会誌第59巻第1号(2017)11