ブックタイトル日本結晶学会誌Vol59No1

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概要

日本結晶学会誌Vol59No1

SACLAのビームライン・実験装置の概要られる.また,1回のX線照射でデータ取得を完結させるシングルショット計測が一般的である.超短時間パルスのもう1つのメリットとして,高い時間分解能を実現できる点が挙げられる.当然のことながら,フェムト秒というX線実験にとって未踏の時間スケールに踏み込むためには,ビームラインにも相応の機能が要求される.例えば,正確な光到達タイミングの計測,光学レーザーなどの実験機器とXFELパルスの精確な同期などが必要である.(5)の特性揺らぎは,SASE方式のXFEL発生原理に由来するもので,本質的に不可避のものである.したがって,各パルスについて強度,空間分布,波長などの特性データを実験と並行して測定し,実験結果の解析に利用しなければならない.このため,XFELの光診断においては,パルスごとの非破壊診断が基本となる.SACLAにおいては上記の要求を満たすビームライン機器と実験装置が開発され,XFELの特性を最大限に活用できる環境が整えられている.本稿では開発の詳細には立ち入らないため,興味のある読者には文献を参照願いたい. 11)-25)3.XFELビームライン3.1ビームラインの全体概要図1に,ビームラインおよび実験ハッチの配置を示す.2本の硬X線ビームライン(BL2およびBL3)が実験ホールの中央あたりを平行に縦貫している.各ビームラインの主要光学系は光学ハッチ(OH1およびOH2)に収容されており,実験ハッチ内には測定装置のためのスペースが広く確保されている.これにより,多様な形態の実験に対応することが可能となる.実験ホール内に設けられた実験ハッチ(EH1-EH4c)のうち,EH1,EH2,EH4cはBL3に属している.EH3とEH4bはBL2に属し,一体で運用される.それぞれのハッチの利用形態はさまざまであるが,おおまかには図1に示された特徴を有している.各ハッチの主要設備は,SACLAのホームページで確認することができる. 26)BL2とBL3はSACLA-SPring-8相互利用実験施設まで延伸されており,SPring-8の放射光あるいは高強度光学レーザーとXFELの同時利用が可能となっている.相互利用実験施設には2個の実験ハッチ(EH5およびEH6)が設置されている.EH5は,BL3のXFELビーム,SPring-8の放射光ビーム,および高強度光学レーザーを導入できる稀有な設備である.また,二段集光光学系によって供給されるナノメートル集光XFELビームを利用した実験が可能である.4),8),22)EH6においては,BL2のXFELビームとペタワット級の高強度レーザービームの同時照射実験装置が整備されている.この章の以下の部分では,ビームライン光学系と光診断系の概要を述べる.BL2とBL3の光学・診断系は基本的に同じであるため,ここではより多くの利用実績があるBL3について記述する.3.2ビームライン光学系ビームライン光学系の役割は,実験に利用しやすいかたちでXFELの光を届けることである.図2に,BL3の構成機器配置を示す.フロントエンド部分ではコリメーターにより不要な軸外放射が除去される.輸送光学系は光学ハッチに納められ,XFELビームの空間およびエネルギー分布の中から必要な部分のみを切り出して実験装置に届ける働きをする.主要な光学機器として二結晶分光器(Si 111,バンド幅0.01%)と全反射平面ミラー(2枚1組)が設けられており,目的に応じて使い分ける図1 SACLAのビームライン.(Beamlines of SACLA.)図2SACLA BL3の光学機器および光診断機器の配置.(Beamline optics and photon diagnostic systems of SACLA BL3.)(光学機器の記号の説明)S(FE):フロントエンドスリット.BW:ベリリウムX線窓.M1,M2a,M2b:平面ミラー.DCM:二結晶分光器.S(TC):輸送部スリット.SA:強度減衰用フィルター.TG:透過型回折格子(ビームスプリッター).(光診断機器の記号の説明)SCM:スクリーンモニター.BM:ビームモニター.WM:波長モニター.GM:ガスモニター.日本結晶学会誌第59巻第1号(2017)7