ブックタイトル日本結晶学会誌Vol58No5

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概要

日本結晶学会誌Vol58No5

水素結合でくみ上げた多孔性二次元シートの積層構造図3LA-H-HexNetsの結晶構造.(CrystalstructuresofLA-H-HexNets.)(a)H-HexNetモチーフ.(b)LA-H-HexNetの積層構造(3層分).(c)特徴的な2層の重なり方:type-aとtype-b.空孔内に包接されている分子は省略してある.a.v.:空隙率(プローブ半径:1.2 A)とがわかった.網目状の空間には,再結晶の際に用いた芳香族分子が包接されており,その包接空間の体積比は54%(Tp-1),41%(T12-1),58%(T18-1),および59%(Ex-1)である.2.2.2配座フラストレーションがもたらすTpの結晶多形単結晶構造解析により結晶構造がわかると,多形結晶の詳細な構造比較も可能になる.Tpは先述したTp-1に加え,合計4種類の多形結晶を与えることがわかった.このうちTp-1を含む3種類は同じ結晶化条件から気まぐれに発現し,選択的な結晶化はいまだ達成できていない(今後これらの混合結晶をTp-2Dsと表記する).興味深いことに4種類の多形はいずれもH-HexNetシート構造をもち,そのシートの重なり方もきわめて類似している.では,何が多形発現のきっかけであろうか?構造を精査すると,H-HexNetシート構造内における配座フラストレーションの分布のしかたが,結晶構造に多様性を与えることがわかった(図4).すなわち,PhTモチーフにおいてそのフェニレン基の立体的な込み合いから,3か所のカルボン酸ダイマーのうち少なくとも1か所はねじれる必要がある(配座フラストレーション).この配座フラストレーションのH-HexNet内での分布の違いによって,ネットワークトポロジーや積層様式が同じでも,結晶構造は異なる.このような配座のわずかな違いであっても,ゲストの包接挙動には大きく影響するため,その構造を明らかにすることは重要である.日本結晶学会誌第58巻第5号(2016)図4 PhTモチーフの配座フラストレーションがもたらすLA-H-HexNet結晶多形の発現.(Generation ofpolymorphic LA-H-HexNet crystals triggered bylocation of conformational frustration of PhT motif.)配座フラストレーションの位置を(*)で示す.2.3 LA-H-HexNetの空間活性化と構造決定多くの場合,得られた直後の多孔性構造体の空間は結晶化に用いた溶媒分子によって満たされているため,これを取り除く必要がある.これを空間の活性化という.まず加熱による活性化を検討するために,得られたLA-H-HexNet結晶の熱重量分析(TGA)を行った.その結果,いずれの結晶も200~250度ですべての包接分子が211