ブックタイトル日本結晶学会誌Vol58No5

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概要

日本結晶学会誌Vol58No5

大腸菌体内で不活性型として生産される超好熱アーキア由来リコンビナント酵素の機能・構造解析表2X線小角散乱法によるリコンビナントPis-GDHの構造学的パラメータ.(Structural parameters of inactiveand active Pis-GDH determined by SAXS.)Pis-GDHRg, z(A)Mr(kDa)Dmax(A)不活性型54.6280145活性型46.5299124図2加熱によるPis-GDHの平均ギニエ半径(Rg,z)と酵素活性の経時変化.(Time dependence of the activationof Pis-GDH.)図1 Pis-GDHの溶液構造に対する加熱処理の影響.(Effect of heat treatment for solution structure of Pis-GDH.)(a)ギニエプロット(b)クラツキープロット.実線:不活性型Pis-GDH,点線:活性型Pis-GDH.クラツキープロットの2つのピークは矢印で示した.図3Pis-GDHの結晶構造とX線小角散乱(SAXS)による低分解能構造.(Crystal and low-resolution structuresof Pis-GDH.)(a)活性型Pis-GDHの結晶構造(リボン図),(b)活性型Pis-GDHのSAXSからのモデル構造(球),(c)不活性型Pis-GDHのSAXSからのモデル構造(球).上段は六量体構造を3回対称軸を中心とした方向から見た図.下段は2回対称軸を左右にした方向から見た図.るギニエプロットの傾きから求められた(図1a).その結果,不活性型酵素のRg,zは活性化によって54.6 Aから46.5 Aへ減少し,また分子の最大長も145 Aから124 Aと減少が見られ,活性化によってPis-GDH分子が,よりコンパクトな構造になっていることが示された.また,散乱角0での散乱強度をタンパク質の濃度で割ることによって求められる分子量(Mr)には大きな違いは見られず,不活性型も活性型も六量体を形成しており,四次構造に変化は見られなかった.分子量に変化がないことはゲルろ過の結果からも示されていた.クラツキープロットは,不活性型,活性型ともに四次構造形成タンパク質で見られる2つのピークが観察されたが,そのピークの位置が異なっていた(図1b).これらのことから,活性化によって四次構造に変化はないものの,四次構造のアレンジメントがルーズな会合状態から,よりコンパクトな構造に変化していることが示された.加熱による立体構造および酵素活性の経時変化の測日本結晶学会誌第58巻第5号(2016)定を解析が容易な70℃で行った(図2).その結果,Rg,zは時間の経過とともに劇的に減少し,それに伴って活性の上昇が観察された.興味深いことにRg,z値の減少と活性の上昇には時間的に差が観察され,全体の構造がコンパクトになる構造変化は比較的早く起こり,活性を示すのに必要な微細な構造変化は少し遅れて起こることが示唆された.2.4 X線小角散乱法によるモデル構造の構築不活性型酵素の原子レベルでの立体構造は結晶が得られないことから不明であり,X線小角散乱法によって得られた散乱曲線からモデル構造の構築を行った(図3).モデル構造は,タンパク質の初期構造を複数の0.3~0.4 nmからなるダミー原子で構成して作製した.そのモデル構造から散乱曲線を計算し,ダミー原子の位置を変えるたびに実験値から得られた散乱曲線に近づいているか確認し,より実験値に近い散乱曲線を与えるモデル構造を構築した.14)活性型Pis-GDHは,X線結晶構造解析の結217