ブックタイトル日本結晶学会誌Vol58No5

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概要

日本結晶学会誌Vol58No5

水素結合でくみ上げた多孔性二次元シートの積層構造3.LA-H-HexNetの機能性3.1吸着材料としてのLA-H-HexNet空間を活性化した後のapo構造の多孔性について調べるために,窒素,二酸化炭素,および水素の吸着実験を低温において行った.T18-apoおよびEx-apoでは窒素は吸着されず,水素が約2mmol/g(STP),二酸化炭素が4~8 mmol/g(STP)程度吸着された.このことからも,部分的には多孔質構造が残っているものの,非多孔性の構造もまた多く含まれていることが示唆された.一方,Tpapoは窒素[8.3 mmol/g(STP)],二酸化炭素[8.7 mmol/g(STP)],水素[5.3 mmol/g(STP)]のいずれの気体に対してもI型の吸着等温線を示し(図8a),これより計算される空孔径(7.7 A)は,計算で推測したそれとよく一致する.また,二酸化炭素の吸着等温線から求めた表面積EA BET(CO 2)は,788m2/gであった.T12-apoも同様に窒素[3.8mmol/g(STP)],水素[3.4 mmol/g(STP)]に対しては,I型の吸着等温線を与えたが,二酸化炭素の場合は,ヒステリシスを示すIV型の吸着等温線を与えた(図8b).吸着量は,p/p 0=0.6において6.9 mmol/g(STP),p/p 0=1において13.2 mmol/g(STP)となり,EA BET(CO 2)は557 m 2 /gであった.このようなヒステリシスは,二酸化炭素の吸着過程においてT12-apoの構造が変化していることを示唆している.さらに,Tp-apoとT12-apoの炭化水素の吸着挙動を調べたところ(図8c,d),メタン(動的半径:3.8 A)やエタン(3.9 A)などの短い炭化水素と比べて,ブタン(4.3 A)やヘキサン(4.3 A)などの比較的長い炭化水素では,低圧領域において急激に吸着されることがわかった.またTp-apoはブタンが最も多く吸着されるのに対して,T12-apoではシクロヘキサン(6.0 A)が最も多く吸着される.このように,非常に類似したH-HexNetシートが積層した多孔質構造であるのにもかかわらず,その吸着挙動がまったく異なるのは大変興味深い.3.2分子配列足場としてのLA-H-HexNet大きさや形が異なる複数種の空孔を有する低密度なH-HexNet構造体は,気体などの吸着材としてだけでなく,機能性分子を配列させるための足場としても興味がもたれる.実際に,T18のLA-H-HexNet結晶を作製する際にフラーレンC 60を添加すると,H-HexNetシートの空間にC 60が包接された2種類の結晶構造T18-C 60-1とT18-C 60-2を得た(図9).T18-C 60-1はvoid Iとvoild IIの一角にそれぞれ1分子ずつC 60が位置している.最も近接したC 60どうしの中心間距離は13.16 Aであり,これ図8 Tp-apoとT12-apoのガス吸着挙等温線.(Gassorption isotherms of Tp-apo and T12-apo.)(a)Tpapoと(b)T12-apoのN2(77 K),CO 2(195 K),H 2(77 K)に対する吸着等温線.(c)Tp-apoと(d)T12-apoの室温(298 K)における低分子量炭化水素の吸着等温線.黒塗り:吸着過程,白抜き:脱離過程.日本結晶学会誌第58巻第5号(2016)図9 T18のLA-H-HexNet内に整列させたC 60分子.(AlignmentsofC60inLA-H-HexNetframeworksofT18.)(a)T18-C 60-1と(b)T18-C 60-2の結晶構造とPhTモチーフの模式図.(c)T18-C 60-2中の隔離された2分子のC 60(両端は,包接されたo-ジクロロベンゼン).213