ブックタイトル日本結晶学会誌Vol57No2

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概要

日本結晶学会誌Vol57No2

クリスタリットZY図Cubic(I)aXaOrthogonal(F)2a32aaaa 2(高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所/aTetragonal(P)a2 22JSTさきがけ富安亮子)aa22Orthogonal(P)a 2BCCと同じ格子面間隔をもつ四つの格子直方晶系Orthorhombic System結晶の7つの晶系のうち,長さの異なる3つの主軸がお互いに直交する直方体形の単位格子をもつ晶系をいう.以前は「斜方晶系」と言われていた.近代結晶学は外形の観察からスタートしたが,「斜方」とは「菱形」の意味であり,この晶系の結晶の外形の断面は菱形が圧倒的に多いという事実から名づけられた.英語名も同様である.しかし今から約100年前に,ラウエが結晶によるX線の回折現象から,結晶はX線の波長程度の単位格子からなる周期構造であることを発見し,ブラッグ父子がその現象を利用して,食塩の結晶中の原子配列を明らかにしたことから,単位格子内の原子の配列や分子構造を解明する現代結晶学が誕生した.最近では巨大なタンパクやウイルスの結晶の構造まで解明されるようになった.しかし外形に由来する「斜方晶系」という名前は,その英語名とともに変更せずに使われていて,専門外の人を悩ませてきた.現代結晶学誕生100年を記念して国連総会で制定された「世界結晶年2014」で,一般向け各種行事が行われた機会に,日本結晶学会総会は2014年11月,「斜方晶系」を「直方晶系(斜方晶系)」と変更することに決定した.(東京工業大学大橋裕二)140日本結晶学会誌第57巻第2号(2015)