ブックタイトル日本結晶学会誌Vol57No2

ページ
66/86

このページは 日本結晶学会誌Vol57No2 の電子ブックに掲載されている66ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

日本結晶学会誌Vol57No2

クリスタリットよりパラメータ数は変わらない.最小二乗法において,反射強度をもとに精密化している場合,最小とすべき量Yは次式で表される.Y=S hw h(I o-I c) 2+S iw i(y t-y) 2Z-CodeZ-Codeは粉末結晶構造解析を行う統合ソフトウェア・パッケージであり,構成するソフトウェア間の連携によって結晶構造解析から電子・核散乱長密度分布の可視化に至るまで円滑に行うことが可能である.大強度量子ビーム施設や実験室X線装置を利用した構造解析は進歩を続けており,それに対応してリートベルト解法などの平均構造解析のみならず新しい解析手法も導入して,ソフトウェアも常に進化させる必要がある.そのため,それぞれのソフトウェアには,実験的な試みを含めた最新の構造解析手法を積極的に導入している.Z-Code開発プロジェクトでは,粉末構造解析用ソフトウェア群をGUI(Graphical User Interface)の統合環境で提供し,多くのユーザが最新科学のトレンドに対応できる機能と操作性を実現できることをめざしている.現在Z-Rietveldを公開している.Z-Code ProjectのHP(https://z-code.kek.jp/zrg/)からダウンロードすることができる.(高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所米村雅雄)拘束Constraint構造変数間に設定する,等式で表せるような束縛.これによりパラメータ数は減少する.拘束の代表的な例としては,水素原子の座標をそれが結合している非水素原子の座標のシフトと連動させる(騎乗モデル,ridingmodel).また,乱れた構造のときに,2つの可能な配置の占有率の和を1にする.なお,単に「束縛」というと,constraintとrestraintのどちらをさすのか曖昧であるので,constraintは「拘束」,restraintは「抑制」と表して区別するとよい.(慶應義塾大学自然科学研究教育センター大場茂)抑制Restraint構造変数間に設定する,柔軟な束縛.ただし,これに右辺第1項は,反射hについての強度差の重み付き二乗和である.第2項は,抑制をかけることにより追加される項であり,ytは構造パラメータyの目標値である.抑制の重みwiは標準偏差s(y)の2乗に反比例するので,s(y)を小さく設定するほど強い束縛となる.抑制の例としては,構造が乱れているときに,結合距離や結合角などをほぼ理想的な値に保つ,あるいは構造中の化学的に等価な部分とほぼ同じになるようにする.なお,極性のある構造で極性軸方向の座標(例えば空間群P2 1でy座標)の原点が任意のときに,完全行列最小二乗法では,構造モデルの重み付き重心がその方向にシフトしないように抑制する.(慶應義塾大学自然科学研究教育センター大場茂)フラック変数Flack Parameter対称心のない結晶構造について,異常散乱効果を考慮するための変数.これは,試料結晶を反転双晶とみなし,(スケール因子で補正後の)回折強度を次式のように表すときの反転構造の体積比率xに相当する(0≦x≦1).I(hkl)=(1-x)|F(hkl)| 2+x|F(-h, -k, -l)| 2x=0のときはモデルの絶対構造が正しく,x=1のときはモデル構造を反転する必要がある.x=0.5のときは,1:1の反転双晶であることを示唆する.また,その標準偏差s(x)が小さいほど,測定データがもつ絶対構造の判別力が強いことを示す.なお,最小二乗法でほかの構造変数とともに精密化して得られるフラック変数の標準偏差は,正しいとは言えない.それはR因子が下がるほど過小評価され,異常散乱効果が弱いほど過大評価される傾向にある.そのため,構造精密化後にフリーデル対の強度データをもとに,パーソンズの商の方法などを使って,フラック変数を計算し直す必要がある.(慶應義塾大学自然科学研究教育センター大場茂)パーソンズの商Parsons’Quotient構造精密化後にフリーデル対の強度をもとに,フラック変数xを求める1つの方法.フリーデル対の強度の和に対する差の割合Qに基づく.Q(hkl)={I(hkl)-I(-h, -k, -l)}/{I(hkl)+I(-h, -k, -l)}反転双晶を仮定したときの計算値をQ model,単一の分域と136日本結晶学会誌第57巻第2号(2015)