ブックタイトル日本結晶学会誌Vol57No2

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概要

日本結晶学会誌Vol57No2

富安亮子,田村智志??? ?? ???Unit-cell a ? a , a3 1 2a ???2a ??? 3a ??1Reciprocal unit-cella ??? *a ??? ??? ??? ???a , a ? a1 2 32peaks with [hk0]*1a ??? * * **3Peaks with l≠0 areembedded around here|l*|Powder diffraction pattern図1 Dominant zone problemの概要.(Illustration fordominant zone problem.)り異なるとき,低角にあるピーク位置から,値の小さいa,b,cに関する情報が得られないという状況が発生する.このようなdominant zone problemを2の探索過程で解決するには,どのピーク位置を格子定数の算出に用いるかはソフトウェアに任せ,多めのピーク位置情報を入力することである.ただし,dominant zone problemは2の探索だけではなく,4のソートでも生じ得る.正しい解が格子定数リストの中に得られていても,FOMの計算に使用されるピーク数が少ないと,一部の格子定数の値がFOMの値に反映されず,正しい格子定数が見つけづらくなるためである.このときdominant zoneをもった格子定数が多数出力される.そこでCONOGRAPHは,4の後にユーザがそのような格子定数を1つ選択して精密化を実行した場合,FOMの計算に用いるピーク数を増やしてソートをやり直すよう警告を出すようにしている.3.Geometrical ambiguity(GA)への対応図2に例を示すように,cubic,hexagonal,rhombohderalの格子定数に対しては,まったく同じピーク位置をもつ低対称の格子定数が複数存在することが知られている.7),8)他方でtriclinicを含む低対称の格子定数においてもまれにGAが発生することがある.このことは最近まで明確に述べられてこなかった.低対称でも起こり得るGAの解決策として,格子定数を入力すると,ほぼ完全に一致するピーク位置をもつ格子定数をすべてリストアップする関数がCONOGRAPHには準備されている.9)ユーザはそれらしい格子定数が見つかった場合,この関数を用いて,ほかに有力な格子定数がないかどうかチェックすることができる.上記の関数をさまざまな格子定数に対し適用することで,低対称の格子定数においてGAがどの程度発生するかも調査できる.これまでに,低対称における事例はかなり少ないことを示唆する結果が得られているが,GAの包括的なテーブルを含む報告を近い将来行う予定である.図2 GAが生じる単位胞の例.(Unitcells causing GA.)図内の4つの格子定数は基底変換でも移り合わず異なる(単位胞体積からわかる)が,ピーク位置は一致する.4.結び粉末指数付けソフトウェアCONOGRAPHの特徴を,粉末指数付けの重要な問題であるdominant zone,geometrical ambiguityと絡めて説明した.謝辞ソフトウェアCONOGRAPHの開発は茨城県委託事業と科研費若手(B)の支援を受け実施された.文献1)R. Oishi-Tomiyasu: J. Appl. Cryst. 47, 593(2014).2)R. Oishi-Tomiyasu: Acta Cryst. A68, 525(2012).3)R. Oishi-Tomiyasu: Acta Cryst. A69, 603(2013).4)P. M. de Wolff: J. Appl. Cryst. 1, 108(1968).5)R. Oishi-Tomiyasu: J. Appl. Cryst. 46, 1277(2013).6)R. Shirley: in Accuracy in Powder Diffraction, Natl Bur. Stand.(US)Spec. Publ., no.567, 361(1980).7)A. D. Mighell and A. Santoro: J. AppL Cryst. 8, 372(1975).8)A. D. Mighell: J. Res. Natl. Inst. Stand. Technol. 109(6), 569(2004).9)R. Oishi-Tomiyasu: J. Appl. Cryst. 47, 2055(2014).プロフィール富安亮子Ryoko OISHI-TOMIYASU高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所/JSTさきがけInstitute of Materials Structure Science, EnergyAccelerator Research Organization/JST Presto〒305-0801茨城県つくば市大穂1-11-1 Oho, Tsukuba, Ibaraki 305-0081, Japane-mail: ryoko.tomiyasu@kek.jp最終学歴:博士(数理科学)現在の研究テーマ:単結晶・粉末結晶構造解析の新しい理論とソフトウェアの開発(さきがけのテーマ)趣味:家族とお散歩田村智志Satoshi TAMURA㈱ヴィジブルインフォメーションセンターVisible Information Center, Inc.〒319-1112茨城県那珂郡東海村村松440番地440 Muramatsu, Tokai-mura, Naka-gun, Ibaraki-ken319-1112, Japan最終学歴:修士(理学)現在の研究テーマ:磁気構造解析ソフトウェア開発130日本結晶学会誌第57巻第2号(2015)