ブックタイトル日本結晶学会誌Vol57No2

概要

日本結晶学会誌Vol57No2

阪本康弘作用している）でも観察されている．19）この系は，CSDAとして用いるTMAPSやNaOH量に依存してbicontinuous構造から二次元ヘキサゴナル構造，ケージ型構造までさまざまなメソ構造を形成する．23）特に，ケージ型構造の中でもある合成条件でTCP構造をもつシリカメソ多孔体が形成される．図8に合成条件C 14GluA :1.91TMAPS :1.56NaOH :15TEOS:1983H 2Oから作製した試料中で観察_された積層欠陥を含むTEM像を示す．この像にはFd3 m構造（|ABC|積層）やP6 3/mmc構造（|AB|積層）のほかにP6/mmm構造からなる|A|積層が観察される．また，TEM像の中央には|AABBCC|（または|AzAαBzBβCzCγ|）の積_層構造をもつR3 m構造が観察される．この非常に大きな繰り返し周期をもつ構造は合金構造（Frank-Kasper相）のμ相に相当する多面体構造をもつ．20），21）図9に図8の下部のTEM像を拡大し多面体モデルとそのモデルをもとに計算したTEM像を示す．図8図9Fd3 _ m構造とその構造多形からなる積層欠陥のTEM像.（TEM image of Fdm structure with stacking faults.）多面体レイヤー（Layer A）の積層パターンを示してある．A，B，Cはそれぞれ周期の1/3ずつずれて積層している．_Fd3 m構造，P6/mmm構造，R3 _ m構造のTEM_像および多面_体モデル．（TEM images of Fd3 m, P6/mmm,and R3 m structures and schematic drawing of theirstructures.）4．まとめTCP構造をもつケージ型シリカメソ多孔体の中でも多_面体レイヤーの積層として記述できるFd3 m構造とその構造多形についてTEM法を用い構造解析を行った例を紹介した．シリカメソ多孔体はメソスケール（数nm～数十nm）に構造上の特徴をもつ物質であるが，TCP構造をもつケージ型シリカメソ多孔体は合金構造（Frank-Kasper相）と非常に良い類似性を示すことが明らかになってきた．また，立方／六方最密充?（CCP/HCP）構造をもつケージ型シリカメソ多孔体は，球形ミセルが剛体球のような性質（ハード性）をもち，空間を最も密に埋め尽くした構造（最密充?構造）である一方，TCP構造をもつケージ型シリカメソ多孔体は互いに接する球形ミセルが変形し（ソフト性），ミセル間の界面面積を最小（minimum-are rule）にした構造と考えることもでき，24），25）シリカ／水／界面活性剤系が示すソフトマテリアルに特徴的な構造である．表1にシリカメソ多孔体でこれまでに報告さている_TCP構造を示す．初めの4つは本解説で紹介したFd3 m構造とその構造多形で，3種類の多面体レイヤー（layerA, layerα, layer z）の積層として記述できる．また，最後_の2つ（Pm3 n構造とP4 2/mnm構造）は，それらのc軸方向の二次元投影像（TEM像）を正方形と正三角形のタイリングとして説明できる構造多形に属し，十二回対称性を示す準周期構造をもつシリカメソ多孔体もその1つである．26）表1シリカメソ多孔体で観察されているTCP構造．（List of TCP structures observed in the mesoporous silicas.）Space groupNo. of polyhedra/uc Average number ofStacking sequence（FK phase*）｛5 12，5 12 6 2，5 12 6 3，5 12 6 4｝faces per cellFd3 _ m（C15）|AαBβCγ|｛16，0，0，8｝13.333P6 3/mmc（C14）|AαBα′|｛8，0，0，4｝13.333R3 _ m（μ）|AzAαBzBβCzCγ|｛7，2，2，2｝13.384P6/mmm（Z）|Az|｛3，2，2，0｝13.428Pm3 _ n（A15）｛1，2，0，0｝13.333P4 2/mnm（σ）｛5，8，2，0｝13.467*Name of the Frank-Kasper phase: Polyhedra in TCP meso-structure is the dual of the Frank-Kasper polyhedra．120日本結晶学会誌第57巻第2号（2015）