ブックタイトル日本結晶学会誌Vol57No2

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概要

日本結晶学会誌Vol57No2

四面体最密充填構造をもつシリカメソ多孔体の構造解析図6Fm3 _ m構造とFd3 _ m構造の界面の(a,b)TEM像と(c)layerλの_構造モデル.(TEM_images of the interfacebetween Fd3 m and Fm3 m structures, and schematicdrawings of layerλ.)ンがFm3 _ m構造に,それらに挟まれた中央のドメインが_Fd3 m構造に相当する.以下,これら2つのTEM像を基_にFm3 m構造とFd3 _ m構造からなる積層欠陥の構造を明_らかにした.2つのドメインはFm3 m構造の[1 _ 10]軸と_Fd 3 m構造の[2 _ 11]軸(図5a),Fm3 _ m構造の[2 _ 11]軸と_Fd 3 m構造の[1 _ 01]軸(図5b)が一致するように,つまり両構造が[111]軸のまわりにお互いに30°回転した配置でエピタキシャル成長していることがわかる.また,それぞれの格子定数はa Fd-3m=16.2 nm,a Fm-3m=9.3 nmとなり,その比a Fm-3m /a Fd-3m=1.74は,両構造が(111)面を共有してエピタキシャル成長した場合の計算値1.73とほぼ一致する._図6a,bにFm3 m構造とFd3 _ m構造の界面のTEM像を示す.このTEM像を基に両構造の構造変化を以下の_ように考えた.まず,Fd3 m構造を構成するlayer A上に2種類の大きさの球形ミセルから形成される中間層(layerλ)が形成される(図6c).そしてその中間層layerλ_の上にFm3 m構造が成長する.このモデルを基に計算したTEM像は観察されたTEM像とよく一致していること_が図6a,bからわかる.この像計算では,Fd3 m構造を形成する2つの多面体を含めすべてのケージ型メソ孔を球形と仮定しているが,特筆すべきは,layerλを構成する大_小のメソ孔とFd3 m構造を構成する5 12と5 12 6 4に相当するメソ孔が同じサイズの球形メソ孔でモデル化できることである.つまりlayer A上に形成されたlayerλでは,も_とのFd3 m構造を形成していた5 12と5 12 6 4に対応したミセルのサイズが保持され,それらの配列と性質が変化し_てFm3 m構造がエピタキシャル成長したと考えられる._ここでミセルの性質とは,多面体構造(Fd3 m構造)を形日本結晶学会誌第57巻第2号(2015)図7_layer zを含んだFd3_ m構造のTEM像と計算像.(TEM images of Fd3 m structure with layer z, andschematic drawings of layer z.)(a)[110]入射と(b)[211]入射および(c)layer zの多面体モデル.成するためのソフト性と,剛体球からなる最密充填構造(Fm3 _ m構造)を形成するためのハード性への変化がHCl添加によるpHの変化によって生じたと考えられる.__3.3 Fd3m構造中の積層欠陥とR3m構造_図5(拡大図:図7a,b)のFd3 m構造中にはlayer Aの|ABC|積層パターン以外にAAやCCといった積層パ_ターンが観察される.この積層パターンはFd3 m構造(つまりlayer Aとlayerαの積層)では説明できず,新たな多面体レイヤー(layer z)が必要となる.図7cにlayerzの構造モデルを示す.このレイヤーは,5 12 6 2と5 12 6 3からなり,Kagome格子の六角形の中心と三角形の中心をそれぞれ占めた構造をしている.図7a,bにlayer zを用いて積層を説明した構造モデルと,それをもとに計算したTEM像を示す.観察像と計算像がよく一致していることがわかる.このlayer zとlayer Aが交互に積層した構造(|Az|積層)はP6/mmm構造をもち合金のZ相,クラスレート化合物のIV型構造に相当するが,シリカメソ多孔体では単一相としていまだ報告はない.同様の多面体レイヤー(layer z)をもつ構造はアニオン性界面活性剤N-ミリストイルグルタミン酸(C 14GluA)をSDAとして,N-トリメトキシシリルプロピル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライド(TMAPS)をCSDAとして用いた系(SDA頭部の負電荷とCSDAの正電荷が相互119