ブックタイトル日本結晶学会誌Vol57No2

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概要

日本結晶学会誌Vol57No2

四面体最密充填構造をもつシリカメソ多孔体の構造解析体からなるレイヤー構造の積層として記述することができ合金構造(Frank-Kasper相)と非常によい類似性を示す.2.ソフトマテリアルとしてのシリカメソ多孔体シリカメソ多孔体は,界面活性剤やブロック共重合体などがもつ自己組織化能を利用して合成され,それら両親媒性物質が構造規定剤(SDA:structure-directingagent)として働き,シリカメソ多孔体のメソ構造を決定する.これら界面活性剤やブロック共重合体は,水溶液中で数nmから数百nmの大きさをもつ集合体(ミセル)を形成し,さらにその集合体が規則配列し特徴的なメソ構造を示す.一般にこのような性質を示す物質はソフトマテリアルと呼ばれ,それらが自発的に形成するメソ構造やその秩序形成過程について盛んに研究が行われている.ソフトマテリアルが作るメソ構造は通常の結晶性固体とは対照的に「原子や分子スケールでの流体的な無秩序性」と「より大きなスケール(メソスコピックなスケール)における高度な秩序性」によって特徴づけられる.特に後者は物質の物理的化学的特性を左右するものであり,その構造が非常に重要になる.水/界面活性剤系が示す集合組織やブロック共重合体に見られるミクロ相分離は,メソスケールのパターン形成としてみることができ,本解説で紹介するシリカ/水/界面活性剤系でつくられる有機無機複合体との間に多くの対応関係と類似性を見ることができる.一般にミセルの形状は充填パラメータ(g=V/a 0l)を用いて表すことができる.ここでVは界面活性剤のアルキル鎖の体積,a0は頭部の有効面積,lはアルキル鎖長である.この充填パラメータを用いると,1/2 < g ? 1で界面活性剤ミセルは二分子層(bilayer),1/3 < g ? 1/2でシリンダー状(cylindrical),g=1/3で球状(spherical)となる.その結果,充填パラメータの減少とともに,界面活性剤ミセルの集合体が作るメソ構造は,二分子層が積層したラメラ構造,シリンダー状ミセルが配列したロッド構造(二次元ヘキサゴナル構造など),球状ミセルが規則配列した構造へと変化する.また,ラメラ構造とロッド構造の間には,共連続構造(bicontinuous構造)と呼ばれる構造が存在する.シリカ/水/界面活性剤の混合系では,界面活性剤がSDAとしてシリカオリゴマーと協奏的にシリンダー状や球状ミセルからなる有機無機複合体メソ構造を形成する.この複合体を焼成して界面活性剤を取り除くことにより,加水分解・縮重合したアモルファスシリカ部分が骨格として残り界面活性剤ミセルの部分がメソ孔となる.メソ孔の配列,形や大きさは,合成時に使用するSDAの種類やシリカ/水/界面活性剤の成分比,合成温度やpHなどさまざまなパラメータによって制御することができる.このように細孔構造をメソスケールで制日本結晶学会誌第57巻第2号(2015)御できることがシリカメソ多孔体の特徴の1つである.3.四面体最密充填構造をもつシリカメソ多孔体3.1四面体最密充填構造と4つの多面体ケージ型シリカメソ多孔体は,充填パラメータg=1/3をもつ球状の界面活性剤ミセルから作製される.球形ミセルはシリカオリゴマーと協奏的に水溶液中でメソ構造を形成し,その有機無機複合体を焼成することにより,界面活性剤を除去した部分が球形ミセルの形状を反映_した空隙(ケージ型メソ孔)として残る.その中でもPm3 n_構造(SBA-1),Fd3 m構造(AMS-8 11),16)),P4 2/mnm構造(AMS-9 13))をもつケージ型シリカメソ多孔体は,結晶学的に独立な複数のサイトに図2に示した特定の多面体(5 12,5 12 6 2,5 12 6 3,5 12 6 4)が各々の面を共有するように図2 TCP構造を形成する4種類の多面体.(Schematicdrawings of four types of polyhedron.)(a)5 12,(b)5 12 6 2,(c)5 12 6 3,(d)5 12 6 4多面体.図3 TCP構造をもつシリカメソ多孔体の多面体モデル.(Representations_ofmesoporoussilicaswithTCPstructures.)(a)Pm3 n構造と(b)Fd3 _ m構造.(c)多面体間のメソ孔の繋がりを表した断面図.灰色部分はシリカ壁に相当する部分.117