ブックタイトル日本結晶学会誌Vol57No2

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概要

日本結晶学会誌Vol57No2

加藤昌子図11[Cu 2(μ-I)2(dmso)2(PPh 3)2]の光,蒸気,熱による発光色変化と構造変化.(Luminescence color changesand structural changes of[Cu 2(μ-I)2(dmso)2(PPh 3)2]indiced by light, vapor, and heat.)図9[Cu2(μ-I)2(dmso)2(PPh3)2](dmso=ジメチルスルホキシド)の分子構造.(Molecular Structure of[Cu2(μ-I)2(dmso)2(PPh3)2].)図12[Cu2(μ-I)2(dmso)2(PPh3)2](CuI-[O,O])から[Cu4(μ3-I)4(PPh 3)4](c-Cu 4I 4)への熱的構造変換を示す粉末X線回折データ.25)(PXRD data showing thethermal structural transformation of[Cu 2(μ-I)2(dmso)2(PPh 3)2]to[Cu 4(μ3-I)4(PPh 3)4].)図10光と蒸気による[Cu 2(μ-I)2(dmso)2(PPh 3)2]の発光スペクトル変化.25)(Photo- and vapor-inducedluminescence spectral changes of[Cu 2(μ-I)2(dmso)2(PPh 3)2].)9).この錯体結晶ははじめ青色の強い発光(?=~0.2)を示すが,光を当て続けると次第に発光色は緑色から黄緑へと変化することが見出された.発光スペクトル変化を追跡すると,色変化は2段階で起こり,350 nmの光を照射すると,数分以内に発光スペクトル極大が435 nmから500 nmにシフトし,光照射を続けると,さらなる長波長シフトがゆっくりと起こり,8時間照射後には530 nmまで変化して収束した(図10a~c).赤外吸収スペクトルなどの追跡から,1段目の早い変化は,dmso分子のO配位からS配位への光結合異性化に基づき,2段目のゆっくりとした変化は,dmso分子の脱離に基づくことが推定された(図11).dmso脱離体は,dmso雰囲気下で加熱することにより再びdmso蒸気を吸収してはじめの青色発光を示す錯体に戻る(図10d).青色発光(λmax=435 nm)は,ほかの類似系と同様,{Cu 2I 2}菱形コアから配位子(PPh 3)への電荷移動状態,3 MLCT(+3 XLCT)に由来する.一方で,配位構造の歪みにより,dmso分子の転換や脱離を伴う光誘起構造変換が励起状態において誘起されると考えられる.対応する臭素架橋二核錯体ではこのような2段階フォトクロミック発光は起こらないことから,フォトクロミック発光には架橋ヨウ素が立体的もしくは電子的に何らかの効果を及ぼしていることが示唆された.さらに,この錯体は,加熱(110℃)によりdmsoを脱離させた場合は二核錯体の二量化が起こり,前述の強発光性のキュバン型四核クラスター[Cu 4(μ3-I)4(PPh 3)4]が生成することが粉末X線回折測定により確認された(図12).dmso脱離体の室温で114日本結晶学会誌第57巻第2号(2015)