ブックタイトル日本結晶学会誌Vol57No2

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概要

日本結晶学会誌Vol57No2

光合成反応中心と集光アンテナタンパク質との複合体(LH1-RC)の結晶構造図1紅色光合成細菌における光合成初期過程.(Theprimaryprocessofphotosynthesisinpurplephotosyntheticbacteria.)(a)紅色光合成細菌のクロマトフォアの模式図.直径は約60 nmである.(b)クロマトフォアに含まれる光合成タンパク質.最も多く存在するLH2が光エネルギーを捕捉し,LH2,LH1,RCの順に励起エネルギーが移動する.この励起エネルギーによりRCのスペシャルペアにおいて電荷分離が起き,RCに結合したユビキノン(Q)が還元される.2個の電子と2個のプロトンにより還元型となったユビキノンはLH1-RC複合体の外に移動し,bc1に電子とプロトンを渡す.bc1はプロトン輸送を行い,クロマトフォアの内外にプロトンの濃度差が形成される.このプロトンにより,ATP合成酵素が駆動される.bc1を通過した電子は,高電位鉄イオウタンパク質(HiPIP)によってRCへと運搬され,スペシャルペアを再還元する.図2紅色光合成細菌の光合成タンパク質の結晶構造.(Crystalstructuresofphotosyntheticproteinsfrompurplephotosynthetic bacteria.)(a)B. viridis由来のRCの構造.(b)Rhodoblastus acidophilus由来のLH2の構造.(c)Rhodobacter sphaeroides由来のbc1の構造.構造解析もさまざまな手法で試みられてきた.しかしながら,いずれも低分解能の解析にとどまっており,LH1の正確な構造,とりわけ効率的な集光やエネルギー移動の機構を解明するために必要なLH1とRCの相互作用や色素などの補因子の配置についてはほとんど未解明であった.2.構造解析紅色光合成細菌Thermochromatium tepidumの生育温日本結晶学会誌第57巻第2号(2015)度は約50℃であり,熱安定性の高い光合成タンパク質をもつ.この細菌由来のRCの結晶構造については,以前に2.2 A分解能で報告している.10)LH1-RC複合体についても,この細菌から精製したものを結晶化に使用した.界面活性剤としてデシルホスホコリン(DPC)を使用することで,良質の結晶を得た.放射光X線を利用して,3.0~3.5 A分解能のX線回折データを収集することができた.しかしながら,これらは互いに同型性が悪く,回折データのマージが困難であった。105