ブックタイトル日本結晶学会誌Vol57No2

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概要

日本結晶学会誌Vol57No2

西増弘志と離れた位置に存在していたことから,今回決定した構造は不活性型であることが示唆された.RECローブとNUCローブはブリッジヘリックスとディスオーダーしたリンカー領域によって連結されていた.sgRNAと相補鎖DNAからなるRNA-DNAヘテロ2本鎖は2つのローブのあいだに収容されていた(図4).sgRNAはcrRNA配列とtracrRNA配列,および,それらをつなぐテトラループから構成される(図2c).crRNA配列はガイド配列(20塩基)とリピート配列(12塩基)からなり,tracrRNA配列はアンチリピート配列(14塩基)と3'テイル配列からなる(図5).結晶構造から,sgRNAはT字型構造をとり,Cas9と結合していることが明らかになった(図5).ガイド配列と相補鎖DNAは20対のWatson-Crick塩基対を介してガイドRNA:標的DNAヘテロ2本鎖を形成し,リピート配列とアンチリピート配列は9対のWatson-Crick塩基対を介してリピート:アンチリピート2本鎖を形成していた.リピート:アンチリピート2本鎖に含まれる6つの塩基は塩基対を形成せず,その結果,リピート:アンチリピート2本鎖は不完全な2本鎖構造をとっていた.3'テイル配列は3つのステムループ(ステムループ1~3)を形成し,ステムループ1とステムループ2はリンカー領域によって連結されていた.7.RECローブRECローブはαヘリックスから構成される新規なフォールドをとっていた(図6).ガイドRNA:標的DNAヘテロ2本鎖はおもにREC1ドメインにより塩基配列非依存的に認識されていた(図6).この構造的な特徴は,Cas9は任意のガイド配列をもつsgRNAと結合し,ガイド配列依存的に標的DNAを認識することと一致していた.リピート:アンチリピート2本鎖はREC1ドメインにより塩基配列依存的に認識されていた(図6).この構造的な特徴は,Cas9オルソログはアミノ酸配列の異なるRECローブをもち,塩基配列の異なるリピート:アンチリピート2本鎖を認識することと一致していた.一方,REC2ドメインはRNA,DNAと相互作用していなかった.変異体解析の結果,REC1ドメインはDNA切断活性に必須である一方,REC2ドメインは活性に必須ではないことが明らかになった.ステムループ1はRECローブとNUCローブにより認識されており,ステムループ2,3はNUCローブと相互作用していた(図4).ステムループ2,3はin vivoにおけるDNA切断活性に重要である.20)したがって,ステムループ2,3とCas9のあいだの相互作用はin vivoにおける複合体形成に重要であると考えられた.8.NUCローブRuvCドメインはRNase Hフォールドをもち,活性残基(Asp10,Glu762,His983,Asp986)はRuvCなどほかのRNase Hスーパーファミリーのヌクレアーゼと同様の配置をとっていた(図7a).したがって,Cas9のRuvCドメインはRNase Hスーパーファミリーに属する既知のヌクレアーゼと同様の反応機構により非相補鎖DNAを切断することが示唆された.一方,HNHドメインはββα-TargetTargetGuideBridge helixREC2domainGuideBridge helixREC2domainStemloop 1Stemloop 1RepeatREC1domainRepeatREC1domainAnti-repeatAnti-repeatTetraloopTetraloop図6 RECローブによるsgRNA-標的DNA認識(ステレオ図).(Recognition of the sgRNA-target DNA by the REC lobe.)100日本結晶学会誌第57巻第2号(2015)