ブックタイトル日本結晶学会誌Vol57No2

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概要

日本結晶学会誌Vol57No2

大場茂表1 insファイルの例.(Example of ins file.)TITL compound (I)CELL 0.71069 19.49980 5.29090 6.08090 90.000 94.266 90.000ZERR 2 0.00900 0.00200 0.00150 0.000 0.025 0.000LATT -1SYMM -X, .50+Y, -ZSFAC O C HUNIT 8 26 32(途中省略)WGHT 0.147300 0.060100FVAR 2.20369 0.58900…1PART 0O1 1 0.309799 0.191406 0.741138 11.00000 0.08867 0.07084 =…20.12112 -0.01348 0.03973 0.00658O2 1 0.432575 -0.290525 0.917803 11.00000 0.19781 0.07188 =0.16923 -0.03292 -0.09422 0.02302AFIX 147H2 3 0.467903 -0.235494 0.982162 11.00000 -1.20000AFIX 0(途中省略)PART 1AFIX 13H10A 3 0.255800 0.133641 0.459603 21.00000 -1.20000…3AFIX 13(途中省略)PART 2H10B 3 0.249617 0.148971 0.460053 -21.00000 -1.20000…4AFIX 0PART 1C11A 2 0.168316 0.409360 0.605200 21.00000 0.05716 0.09438 =0.14105 -0.02629 0.01570 -0.01308AFIX 23H11A 3 0.173736 0.249861 0.683210 21.00000 -1.20000H11B 3 0.136051 0.383629 0.477928 21.00000 -1.20000AFIX 0(途中省略)PART 0HKLF 4END(注)1自由変数の2番目(p 2)がディスオーダーの一方の占有因子である.2原子の占有因子「11.0」で,10の位は固定を意味する(つまり1.0で固定).3占有因子「21.0」は,自由変数の2番目の値p 2×1.0を意味する.4占有因子「-21.0」は,(1-p 2)×1.0のことである.けではないが,それぞれ「拘束」と「抑制」と表して明確に区別することにする.動詞はconstrainとrestrainであるが,それぞれ「拘束する」,「抑制する」と表現できる.まず,拘束についてであるが,これはパラメータ間に1つの等式で表せるような厳密な関係が存在する場合である.1つの変数が,その他の変数の値によって必然的に定まる.例えば,水素原子の座標を,それが結合している非水素原子(これを親原子という)の座標の変化に連動させて,理想的な構造モデルを保つように拘束することがよく行われる.これは親原子を馬,水素原子を騎手とみなすと,馬の移動とともに騎手もまったく同じだけ移動すると仮定するので,騎乗モデル(riding model)とよばれる.抑制のほうは,変数が理想的な条件からある程度シフトすることを許すが,一定以上離れすぎないように制約する.これは,構造が乱れているときに,原子間の結合距離や結合角を妥当な値に保ちながら,多少の柔軟性を許して精密化するときなどに用いる.3.5原子の占有因子や温度因子表1のinsファイルに戻って,原子座標などのデータの前にFVAR(free variable)というコマンドがある.この最初の引数は,スケール因子である.構造が乱れている場合は表1に示した例のように,片方の配置の占有因子を2番目以降の引数としてこのコマンドに追加し,精密化することができる.なお,SHELXLでは,原子の存在割合つまり占有率そのものではなく,非対称単位当たりの数を用いるので,それを占有因子と呼んで区別することにする.すなわち,一般位置の多重度(つまり単位胞中の等価点の数)をG,その原子のサイトの多重度をgj,占有率をPjとすると,原子の占有因子m jは次式で定義される.90日本結晶学会誌第57巻第2号(2015)