ブックタイトル日本結晶学会誌Vol57No2

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概要

日本結晶学会誌Vol57No2

SHELXLの特徴を知ろう!(A)CrystalStructure 2)の場合解析ディレクトリ中では,resファイルは通常shelxl.resという名前になっている.グラフィックスの中の「Refine」-「Least-Squares」のメニュー画面で,□Use the latest SHELXL RES fileのチェックをはずし,□Edit input file before SHELXL runにチェックを入れる.そうすると,insファイルの編集画面が出てくるので,束縛条件を追加するなどの修正を加える.なお,前の解析でグラフィックスを通さずに直接入れた束縛条件は保存されていない.そのような場合は,resファイルを並べて開き,前に入れた束縛条件をコピー&ペーストする.編集後に,insファイルを上書き保存してから閉じると,精密化が実行される.(B)APEX2 3)の場合グラフィックス画面からいったん離れて,解析ディレクトリ中の○○.insという名前のファイルを開き,必要な修正を加える.なお,前の解析でグラフィックスを通さずに直接入れた束縛条件も保存されている.insファイルの編集が終わったら,上書き保存する.APEX2の制御画面に戻り,1「Structure Refinement」の画面で,「RefreshFiles」ボタンを押すことによって,insファイルの内容を読み込ませ,「Refine with XL」を押す(これで精密化が行われる).2解析結果のR因子などから正常に精密化されたことを確認してから,「copy RES to INS」を押して,Instructionの画面にデータが表示されていることを確認したら,「Open in XSHELL」を押す.これで,XSHELLの画面で解析が再開できる.なお,XSHELLの外でinsファイルを編集しても,それはXSHELLでの計算に反映されない.このため,XSHELLを介さずにXLに直接insファイルを送って,精密化を1回行わせる必要があるのである.ちなみに,Brukerのパッケージソフトウェアの中のXSとXLは,それぞれSHELXSとSHELXLに相当する.そして,XSHELLは,SHELXLのGUIであるが,作者はG. M.Scheldrickではない.そのためもあって完成度が高いとはいえない.5)ディスオーダーの解析などをする際は,XSHELLを通して束縛を設定するよりも,ユーザーがinsファイルを直接編集するほうが手っ取り早い.3.3 insファイルの内容insファイルの例を表1に示した.これは,3または4文字からなるコマンド(計算の指令)と,その引数(計算に使う数値など)からなる.O1やC11Aなどの原子名も,構造因子の計算に含めるコマンドとみなしている.このため,SHELXLでは原子名が4文字以内に制約されている.insファイル中のコマンドの入力順序については,次のようにしなければならない.1TITL(物質名などのタイトル)2CELL(X線の波長と格子定数)日本結晶学会誌第57巻第2号(2015)3ZERR(Zと格子定数の標準偏差)4LATT(単位格子の型と対称心の有無.デフォルトは単純格子で対称心ありであり,その場合このコマンドは省略可能)5SYMM(対称操作のうち,恒等変換x,y,zや複合格子や対称心などの対称性以外を,必要があれば入れる)6SFAC(元素記号を並べることで,原子散乱因子の番号を指定する)7DISP(特定の元素の異常散乱項と吸収断面積を,必要があれば入れる)8UNIT(単位格子中の各原子数を,SFACと同じ順番で指定する)以上,TITLからUNITまでは定型であり,どのような場合でもこの順番に入れる.insファイルの読み込みはENDで終わるが,その直前に入れるべきコマンドは,HKLF(反射データの読み込み)である.それ以外のコマンド(原子座標なども含む)は,UNITとHKLFの間に入っていればよく,一部のコマンドを除くと入力順序は任意である.個々のコマンドの入力方法やその内容について,すべてをカバーするのは誌面の関係で到底無理なので,必要に応じて要点のみを説明することにする.上記の4で「LATT n」とすると,|n|=1(単純格子),2(体心),3(複合六方の順設定),4(面心),5(A底心),6(B底心),7(C底心)に対応する.また,対称心ありのときnが正,対称心なしのときは負である.表1の例では,「LATT-1」であることから単純格子で対称心がなく,また格子定数から単斜晶系であり,SYMMで示されている対称操作(-x,1/2+y,-z)から,空間群はP2 1であることがわかる.最初から空間群の記号,あるいはその通し番号で指定したほうがわかりやすいと思うかもしれないが,LATTとSYMMを組み合わせたこの入力形式であれば,あらゆる空間群のどのような軸設定(それに伴い対称操作も異なる)にも対応できるというメリットがある.上記7のDISP指令は,通常のMoやCu Kaによる測定データに対しては入力する必要がない.これは,放射光を用いたデータについてその波長に対応させて,特定の原子の異常散乱項と吸収断面積を読み込ませるときに使う.3.4 2種類の束縛原子座標や温度因子など,構造の変数は何の束縛もかけずに精密化し,収束すれば理想的であるが,実際はそうはいかない.特に水素原子,あるいは乱れのために占有率が低い炭素原子などは,妥当な結合距離や結合角を保ちにくい.そこで,構造モデルが歪まないように,(変数を単に固定するのではなく)束縛をかける.この束縛には,大きく分けて2通りある.それは,constraintとrestraintである.これらの訳語はまだ定まっているわ89