ブックタイトル日本結晶学会誌Vol57No2

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概要

日本結晶学会誌Vol57No2

固体電解質探索と結晶構造解析く,不純物の混入や組成の変化により,特性が大きく変化すると考えられる.この材料の実用化が難しかったのは,0.45 Vという低い分解電圧にあった.そのためさまざまな窒化物誘導体が合成され,分解電圧を上げる試みがなされた.Li 3N-LiI-LiOHの3成分系において1.6~1.8 Vの分解電圧が見出された.27)さらにLi 3Nに遷移金属のCo,Ni,Cuといった遷移金属イオンをドープして得られる分解電圧が1 V以上の材料も研究された.28)2.3 Li-β-アルミナβ-アルミナはNa/S電池で実用的に使われており,典型的な二次元拡散のイオン導電体である.Li-β-アルミナ16)は,Na-βアルミナとのイオン交換により得られる.その構造は図1bに示したように,O 2-の立方最密配置による八面体と四面体の間隙にAl 3+が入るスピネルブロック構造である.スピネルブロックは交互に積層することで,Liイオンを含む導電レイヤーが構築される構造となっている.2.4 Li 2MCl 4AB 2X 4で表現されるスピネル構造は,AイオンとBイオンが四面体位置と八面体位置に存在するXイオンの立方最密充填構造であることは説明の必要はないだろう.この材料系は,四面体位置と八面体位置の半分をリチウムイオンが占める逆スピネル型である.四面体位置のリチウムは,スピネルの骨格構造の作る三次元に広がるトンネル構造に位置する.そのため,Li 2MCl 4(M=Cd,Mg,Mn,V)のハロゲン化物は,比較的低温で高いリチウムイオン導電性を示すことが報告されている.17)2.5 La 0.5Li 0.5TiO 3ABO 3の一般式で表されるペロブスカイトは三次元構造を有しており,BO 6八面体が頂点共有し,12配位のAサイトによる骨格構造を有している.リチウムイオン含有ペロブスカイト(La 2/3-xLi 3xTiO 3)18系)は,高リチウムイオン導電体として広範囲に研究されてきた.この系では,Liイオンはより大きいLa 3+イオンとともにAサイトを占有する.Liイオンは,Aサイトの中心を占有するのではなくて,Aサイトが2つの歪んだ四面体位置の1つに偏っている.その結果,リチウムイオンの偏りによって生じるAサイト位置周辺の多くの欠陥が構造中に現れる.そのため,リチウムイオンが欠陥を介して移動でき,高い導電率(10 -5~10 -3 S/cm)を示すことになる.2.6 LISICONリチウムイオン導電体において,LISICON(LIthiumSuper Ionic CONductor)19)と呼ばれる酸化物の物質群がある.Li 4GeO 4を母構造とした材料に,Znが固溶したxLi 4GeO 4-(1-x)Zn 2GeO 4で表されるイオン導電体に付けられた総称である.現在はγ-Li 3PO 4(高温相)型のLiO 4,GeO 4,SiO 4,PO 4,ZnO 4,VO 4という四面体とLiO 6八面体により形成される骨格構造をもつ酸化物物質群全体の名称として使われている.この物質群には広い固溶領域がある.異なる価数のイオンと置換することでLi欠損や過剰Liの導入が容易であり,構造と組成をさまざまに変化させることができるのが特徴である.例えば,Li 4GeO 4を母構造にして,Li欠損を導入にするにはAl 3+を部分置換させ,Li 4-3xAl xGeO 4固溶体を合成でき,格子間Liを導入するには,P 5+をGe 4+と部分置換することでLi 3+xP 1-xGe xO 4固溶体を合成できる.2.7 Thio-LISICON2.6で示したLISICONは,酸化物系材料である.イオン導電率をより向上させるために,酸素の代わりにより分極率の高い硫黄を用いることが次に検討された.菅野と入江らは,Li 2S-GeS 2,Li 2S-GeS 2-ZnS,Li 2S-GeS 2-Ga 2S 3といった硫化ゲルマニウム系を基本とする物質群を探索した.このときに,Li 2S-GeS 2-Ga 2S 3で高図2 Li 2MCl 4の結晶構Crystal造.(structures of Li 2MCl 4.)日本結晶学会誌第57巻第2号(2015)図3 La 0.5Li 0.5TiO 3の結晶構造.(Crystal structures ofLa 0.5Li 0.5TiO 3.)81