ブックタイトル日本結晶学会誌Vol57No2

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概要

日本結晶学会誌Vol57No2

米村雅雄表1結晶性リチウムイオン導電体の導電率.(Conductivity of glassy lithium ionic conductors.)CompoundConductivity at r.t.(σ/Scm ?1)ReferenceLiI5.5×10 ?7Schlaikjer et al.(1973)14)Li 3N1.0×10 ?3Lapp et al.(1983)15)Li-β-alumina1.3×10 ?4Whittingham et al.(1972)16)Li 2CdCl 41.1×10 ?6Kanno et al.(1988)17)La 0.5Li 0.5TiO 31.0×10 ?3Inaguma et al.(1994)18)LISICON Li 14Zn(GeO 4)4)6.0×10 ?7Hong et al.(1978)19)0.6Li 4GeO 4-0.4Li 3VO 43.0×10 ?5West et al.(1980)20)0.5Li 3PO 4-0.5Li 4SiO 44.0×10 ?6Hu et al.(1977)21)0.4Li 4SiO 4-0.6Li 3VO 41.7×10 ?5Kuwano et al.(1981)22)Li 3PS 43.0×10 ?7Tachez et al.(1984)23)Li 2SiS 32.0×10 ?6Huggins et al.(1989)24)Li 4SiS 45.0×10 ?8Huggins et al.(1989)24)電性を向上させる設計指針を用いる.銀イオン導電体では,ガラス系材料(AgI-Ag 2MoO 4)12)および結晶性材料(RbAg 4I 5)13)において,ほぼ同等のイオン導電性(10 -1~10 -2 S/cm)を示す材料が発見されているが,一般的にガラス系材料が先行して研究がされ,結晶性材料のイオン導電率が追いつき,追い抜く傾向がある.結晶性材料は,物質設計に従って材料合成を行っても,期待される組成と構造になることは少なく,高導電性を示す結晶構造を構築するのが非常に難しいからである.しかし,銀イオンや銅イオンでは,ガラス系に比べ,結晶性のイオン導電体のほうが最終的には高イオン導電性材料が発見されている.リチウムイオン導電体もその傾向があった.本記事では結晶性材料のリチウムイオン導電体に絞って,これまでのリチウムイオン導電体を紹介する.まず,代表的な例を表1に示し,各リチウムイオン導電体について短くまとめることにする.2.1ヨウ化リチウム,LiIリチウム導電体の探索は1970年代頃から始まり,LiX(X=F,Cl,Br,I)のハロゲン化リチウムが最初と言える.LiIの結晶構造は,ほかのハロゲン化リチウムと同様のNaCl型の構造であるが,I-イオンの分極が大きいため,10 -7 S/cmというイオン導電性が発現する.これは液体に比べれば非常に低いイオン導電率であったが,1972年にペースメーカ用電池の電解質として実用化されている.電池内で,正極(ヨウ素錯体)と負極材料(金属リチウム)を接触させた界面において自動的に薄膜の固体電解質相が生成し,固体電池を形成する.自然に固体電解質が界面上に生成するため,内部短絡しにくく固体電池として高い信頼性があった.2.2窒化リチウム,Li 3Nこの材料は,図1aに示すように,Li 2N層とLi層が交互に積層する六方晶系層状構造である.25)Lappらが単結晶による導電率測定を行い,c軸方向(10 -5 S/cm)に対して,ab平面のイオン導電率(1.2×10 -3 S/cm)が2桁高く,Li層のLiがab平面の二次元拡散が主に導電に寄与(a)(b)図1 Li 3N(a)とLi-β-アルミナ(b)の結晶構造.(Crystalstructures of Li 3N(a)and Li-β-alumina(b).)していることを明らかにした.26)しかし,この系の導電率は,合成条件などで大きく変化する矛盾した報告が多80日本結晶学会誌第57巻第2号(2015)