ブックタイトル日本結晶学会誌Vol56No6

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日本結晶学会誌Vol56No6

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日本結晶学会誌Vol56No6

新刊紹介現代表面科学シリーズ,日本表面科学会編「表面」を利用した新たな材料系やそれを計測するための手段の広がりを反映して,表面科学の参考書を必要とする読者も多種多様に広がっている.原理原則から学びたい読者もいれば,手っ取り早く情報を確認したい読者もいる.まえがきに「表面科学にしたしみながら現代における役割を広く理解してもらう」ことを目的として,大学~研究開発の現場のさまざまな立場の読者の要求に応えるべく刊行したと記されているとおり,日本表面科学会の現代表面科学シリーズはユニークな切り口で各巻をまとめた良書である.全6巻のうち1~3巻について感想を述べることで紹介としたい.1巻「表面科学こと始め」の副題は~開拓者たちのひらめきに学ぶ~である.表面で起こる現象を解明して現在の科学技術の礎を創った先人の研究を,装置の写真や原著論文のデータなどをふんだんに盛り込んで紹介している.普通の教科書では各単元の最初のほうで数行で紹介される程度であるこうした内容がリアルに記載されており,表面科学にとらわれず「科学を進めるリアル研究者の発想の努力の軌跡」をたどることができ,教科書としてはもちろん読み物としてもすばらしいものである.2巻「表面科学の基礎」では,タイトルのとおり,表面科学の基本となる知識と実際の計測法の両方をバランスよく紹介されている.専門家には当たり前である表面の理想と現実(第1章)や表面の構造(第2章),電子状態(第3章),について,具体的な物性値などを紹介して初学者にも本質が理解できるように工夫されている.後半では,最新の分析法(第5章)だけでなく,反応のダイナミックス(第4章)や計算科学(第6章)についても紹介され,最新の論文を読むのに最低限必要な広範囲な情報がコンパクトにまとめられている.3巻「表面物性」では,固体物質の構造を3次元から2次元に低下させた際に発現するユニークな挙動について,力学,電子・電気的特性,特有な表面構造,化学的性質,等の視点から紹介されている.印象的であったのは,それぞれのユニークな物性を,最新の研究結果とオリジナルな図面を用いて紹介されていることであり,教科書として基礎的な知見を学習(もしくは再確認)するとともに最新の研究の状況も概観できるのではと感じさせられた.各巻は独立しているので,興味あるもしくは必要とする観点の巻を読むだけでも十二分に目的は達成できるであろう.もちろん,各巻の切り口の差異を楽しみながら全巻を読むことにより,表面科学の考え方をおおいにリニューアルできるシリーズであり,ぜひ一読されることを薦めたい.(高エネルギー加速器研究機構木村正雄)1表面科学こと始め担当編集幹事久保田純共立出版㈱(2012)定価3,500円+税ISBN 978-4-320-03369-62表面科学の基礎担当編集幹事板倉明子共立出版㈱(2013)定価3,500円+税ISBN 978-4-320-03373-33表面物性担当編集幹事坂本一之共立出版㈱(2012)定価3,500円+税ISBN 978-4-320-03371-9日本結晶学会誌第56巻第6号(2014)421