ブックタイトル日本結晶学会誌Vol56No6

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日本結晶学会誌Vol56No6

世界結晶年(IYCr2014)日本の取り組み企画展美しき機能材料人工結晶国立科学博物館地学研究部宮脇律郎,門馬綱一物質・材料研究機構環境エネルギー材料部門島村清史,大島祐一Ritsuro MIYAWAKI, Koichi MOMMA, Kiyoshi SHIMAMURA and Yuichi OSHIMA:An Exhibition on Artificially Grown Crystals1.人工結晶の収集・保存日本結晶成長学会は, 1974年に創立されて以来,「結晶成長」をキーワードとして基礎から応用まで横断的・総合的に取り組む唯一の学会として,産官学の各分野からの支援を受けて,発展を遂げてきました.日本結晶成長学会創立30周年記念事業の一環として,日本が世界に誇る電子産業を支えてきた材料開発の過程で生まれた歴史的に貴重な新材料結晶の収集が始まりました.その後も継続しているこの事業の成果は,国立科学博物館所蔵標本として結実し,つくば研究学園都市の標本庫で大切に保管されています.世界結晶年に指定された本年,学会創立40周年を迎え,その記念事業の1つとして,「歴史的人工結晶の収集事業」のさらなる充実を推し進め,この40年間の結晶成長の技術的・学術的な進歩を顧みて,実物の結晶を一般にも公開する展示が企画され,東京上野の国立科学博物館で開催の運びとなりました.2.人工結晶の歴史人工結晶の黎明期は,今から100年ほど前,ラウエ博士やブラッグ父子がX線回折により近代結晶学を切り開いた時代と一致します.高温で原料を融かし,大粒の結晶を「育てる」技術は,貴重な天然の宝石を,工場でも生産できる産業に発達しました.結晶の特性は,見た目の美しさに限らず,硬さ,強さなどの物性にも注目が広がり,さらに光学的,電気的な物性を活かして半導体のような電子デバイスの機能性材料としてめざましい発展を遂げました.向上する性能に応えるべく,その製造方法にも目を見張る改良と改革がありましたが,これらの基礎には変わることのない原理もあることが,歴代の結晶を並べることによって見えてきます.3.身近な人工結晶展示は切削・研磨加工される前の人工結晶の「原石」インゴットを中心に構成されています.人工ルビーなど光学結晶は,鮮やかな色で,ちょっと美味しそうにも見えます.半導体の素材,超高純度シリコンは,さまざまな電子機器に組み込まれて身の回りにあるはずですが,加工される前の大型単結晶はなかなか目にする機会がありません.妖しくも煌めく人工結晶の美しさの向こうに,不思議な結晶の機能性・物性と,このような結晶を作り出した人々の知恵と工夫の積み重ねを感じていただければ幸いです.硫酸グリシン(水溶性強誘電体)[水溶液徐冷法]シリコンデンドライト結晶[ウェッブ成長法]384日本結晶学会誌第56巻第6号(2014)