ブックタイトル日本結晶学会誌Vol56No6

ページ
36/104

このページは 日本結晶学会誌Vol56No6 の電子ブックに掲載されている36ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

日本結晶学会誌Vol56No6

ブックを読む

Flash版でブックを開く

このブックはこの環境からは閲覧できません。

概要

日本結晶学会誌Vol56No6

世界結晶年(IYCr2014)日本の取り組み世界結晶年(IYCr2014)対称性・群論トレーニングコース総合科学研究機構岡c伸生Nobuo OKAZAKI: Experience Note of the Traning Course on Symmetry and GroupTheory, Tsukuba 20141.はじめに2014年8月14日~17日の日程で,高エネルギー加速器研究機構つくばキャンパス研究本館において開催された『世界結晶年(IYCr2014)対称性・群論トレーニングコース』に参加する機会を得た.本コースは,群論について体系的な講義を受けることができる,(おそらく)日本では数少ない機会ということもあり, JPXTALメーリングリストに告知が流れてから1週間ほどで30名程度の参加枠が埋まってしまうほどの人気だったようである.講義はフランス・ロレーヌ大学結晶学教室のMasshimo Nespolo教授により日本語で行われた.プレ講義として代数学から始まり,最終的に空間群,消滅則,部分群などに到達する内容であった.私は10年ほどタンパク質結晶構造解析にかかわる研究・開発を行っていたため,今回の講義内容は「知っていて当然」であるべきなのだが,実際は「何となく聞いたことがあるけど…よく知らない」という恥ずかしいレベルであるということをまず断っておきたい.そのため,申し込む際も「果たして講義についていけるのだろうか」というのが一番の心配事であったのだが,果たしてその結果,理解が進んだのかどうかは本文を読んで判断していただきたいと思う.2.トレーニングコース概要2.1プレ講義8/14(木)群論の講義に先だって,代数学の講義が半日開講された.行列の演算に始まり,跡や行列式の求め方,余因子行列や拡大行列というように続いた.行列の演算はともかく,その他の内容は高校や学部時代の講義で習った内容だと思われるが,言葉が何となく頭に残っている程度だったため,すでに初日(といっても4時間ほど)から頭の中は知恵熱状態であった.次の日からは本格的な講義になるとのことで,早くも不安でいっぱいのスタートを切った.2.2講義1日目8/15(金)お盆まっただ中の夏の日,プログラムを見ると講義予定時間が9時~19時と書かれているのがさらなる不安をあおる.この日は抽象代数学入門から始まる内容であった.内容は『抽象』の名のとおり,完全に抽象的な代数的な構造の話となり,いきなり(私には)ハイレベルな内容――マグマ,準群,半群,ループ,モノイド,群,アベール群,講義風景圏,亜群…――であり,早々に先の見えないトンネルに足を踏み入れたような感覚の中にいた(不甲斐なくて申し訳ない).その後,結合律,単位元…などと話は進み,点群にたどり着いた.本講義は『演習を適宜行いながら』とされており,セクションごとに基礎的,応用的な例題を行いつつ進められた.そのため,上記のような馴染みのない言葉や内容が出てきても演習を行うことで理解が少しずつ進んだように思う.もし演習がなかったら何のことやら,のまま講義が進んでいったかもしれず,これは大変有効な方法であった.さらにこの後内容は進み, 19時頃に講義1日目は終了し,懇親会が開かれた.2.3懇親会本コースは30人程度の小さな集まりのため,乾杯の後,一人ずつ簡単な自己紹介が行われた.コース終了の数日後に大学院入試を控えている学部4回生(その後,試験は無事に乗り越えられたのだろうか),タンパク質結晶構造の博士課程の学生, X線結晶構造解析の講義を受けもつことになったので復習のため…といったさまざまな分野,立場の方々が,大半は大学関係,残りが公的研究機関から参加していた.自分の学生時代を顧みるに,このようなコースにしっかり参加する学生には頭が下がる思いである.通常の学会と異なり,ほとんどの人が初対面であり,懇親会の始まりは少々ぎこちない感じがあったが,そこは研究者同士であり,分野や研究内容をお互い話したりして次第に盛り上がっていたように思う.やがて会場を閉めるというので,場はドミトリーへ.今回のように,大半が同じ宿舎というのはエンドレスな宴会になるキケンをはらんでおり,次の日も内容も時間割もハードな講義があるのがわかっていながら,結局日付が変わるまで数人の参加者と歓談す372日本結晶学会誌第56巻第6号(2014)