ブックタイトル日本結晶学会誌Vol56No6

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日本結晶学会誌Vol56No6

特集:世界結晶年(IYCr2014)日本の取り組み日本結晶学会誌56,347(2014)世界結晶年2014に寄せて京都大学大学院理学研究科三木邦夫Kunio MIKI: International Year of Crystallography 20142014年を世界結晶年(International Year of CrystallographyIYCr2014)に制定することは, 2012年7月の国連総会で決定されました.これを機に,国際結晶学連合(IUCr)やユネスコが中心となり,世界各国,各地域の結晶学コミュニティーでさまざまな活動が始まりました. 2014年1月20,21日には,パリのユネスコ本部でオープニングセレモニーが開かれました.世界結晶年は,近代結晶学の創成から100年が経過したことを記念するものです.結晶によるX線の回折現象を発見したマックス・フォン・ラウエ博士は1914年に, X線の回折と反射についての法則を発見したヘンリーおよびローレンス・ブラッグの両博士は1915年に,それぞれノーベル物理学賞を受賞しています.忘れてはならないのは,この結晶学の創成期に,わが国でもすでにその礎が築かれていたことです.寺田寅彦博士は, 1913年にX線回折の実験に関する論文をNatureに発表しています.また同じ年に,初代の日本結晶学会長である西川正治博士は,線維などのX線回折についての研究を報告しています.それから100年,世界でもわが国でも,結晶学はさまざまな科学分野と連携して,大きな発展を遂げてきました.世界結晶年の制定を受けて,わが国でも日本学術会議(栗原和枝IUCr分科会委員長)や関係する学協会が協力して,世界結晶年2014日本委員会(飯島澄男委員長)が設立されました.日本結晶学会の坂田誠前会長や大橋裕二IUCr前会長をはじめとする多くの方々がこの設立に尽力されました.世界結晶年としてのさまざまな企画を実行するために,日本委員会実行委員会(高田昌樹委員長)も発足して,わが国としても万全の体制でこの世界結晶年に取り組むことになりました.新年早々の1月23日には, 35学協会の賛同を受けて,日本学術会議講堂でオープニングシンポジウムが開催されました.そこでは,結晶学が物質を理解することにいかに貢献してきたか,学術的な基礎研究にとどまらず,物質科学から生命科学に関係する広い産業界の発展を支えているかについて,それぞれの第一線で活躍する方々が講演され,世界結晶年の幕開けにふさわしいものになりました.さらには, 11月初めに東京大学で行われた今年度の日本結晶学会年会(田之倉優年会実行委員長)では,会期を一日延長して,中日にあたる11月2日に伊藤国際学術研究センターにおいて,記念シンポジウム「未来を拓く結晶学」(学会会員向け)と記念講演会「結晶の美しい世界と私たちの未来」(一般向け)が開催されました.この日のシンポジウムと講演会では,世界第一線の研究者から結晶・結晶学にかかわる最先端の研究が紹介され,また,結晶学がどのように広く社会のさまざまな分野に貢献しているかが示され,参加された多くの皆さんに感銘を与えました.世界結晶年を記念して取り組んだ企画は,こればかりではありません.関係する多くの学協会や研究機関のご支援を受けて,学協会や大学が主催する学術的な講演会をはじめ,一般の参加者を対象にした講演会や展示会,若い学生諸君を対象にした結晶学のトレーニングコースに至るまで,幅広い企画が行われました.例えば,私の専門分野であるタンパク質結晶学の分野では,今年6月に横浜で開催された日本蛋白質科学会年会でタンパク質結晶学のヒストリカル・レビューのセッションが企画されました.この分野で活躍してこられた国内外の大御所の研究者に,それぞれの視点からタンパク質結晶学の歴史と進歩をお話ししていただき,好評を博しました.とくにタンパク質結晶学が専門でない方々からの反響が大きく,結晶学とその歴史を広く理解していただく機会になったことをうれしく思った次第でした.このようなさまざまな取り組みは,関連する諸学会や研究機関で行われ,世界結晶年の意義を広報する着実な活動が行われました.本号のミニ特集では,多くの会員の皆さんのご努力によって行われた世界結晶年の企画行事のいくつかが紹介されています.どのような取り組みが行われたかを知ることで,世界結晶年のいろいろな側面を理解して,結晶学の100年とこれからの発展について,あらためて思いをはせる機会になることを願っています.日本結晶学会誌第56巻第6号(2014)347