ブックタイトル日本結晶学会誌Vol56No5

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概要

日本結晶学会誌Vol56No5

クリスタリットえてスウェーデン(ESS)や中国(CSNS)でも建設が進められている.なお,通常の研究用原子炉で得られる連続的な中性子のことを,パルス中性子に対して定常中性子と呼ぶことがある.(㈱独日本原子力研究開発機構J-PARCセンター大原高志)X-N変形密度図X-N Deformation Mapオペランド測定Operand Structural Study実際の使用環境下で半導体や電池などのデバイスの測定を行うことであり,刻々と変化し続ける現象を直接観測することによって機能との相関を見出す.オペランド測定では,より小さいものを,より短時間スケールで観測することによって,正確に動作中の現象を観察することが可能である.((公財)高輝度光科学研究センター杉本邦久)励起・準安定状態Excited and Metastable State光,熱,電場,磁場などの外場を与えることによって,基底状態から高いエネルギーをもつ励起状態になる.また,安定状態に励起や遷移する過程で,かなり長い時間スケールでとどまることのできる状態が準安定状態である.準安定状態は,非平衡状態であり,気体,液体,または固体の均一系を静かにゆっくりと加熱または冷却すると転移点をこえても相転移しないで,もとの相のままで存在することなどがその例である.((公財)高輝度光科学研究センター杉本邦久)パルス中性子Pulsed Neutronパルス状に発生する中性子のこと.加速器を利用した中性子源では加速した陽子(もしくは電子)を金属標的に射ち込むことで中性子を発生させるが,その際に陽子ビームをパルス状に射ち込むために発生する中性子もパルス状になる.パルスの周期は中性子施設によって異なり, J-PARCでは25 Hz周期となる.中性子は波長によって速度が異なることから,パルス中性子を用いた実験装置では中性子が発生してから検出器に到達するまでに要した時間を計測することで中性子の波長を識別できる.これを「飛行時間(Time-of-Flight:TOF)法」といい,この手法を用いることで白色中性子を有効に使った回折測定が可能となる.世界の主なパルス中性子施設としては日本のJ-PARCのほかに英国のISIS,米国のSNSなどがあり,加X線回折測定で得られた構造因子に加え,中性子構造解析で得られた原子の座標および温度因子を用いて計算した変形電子密度図.以下の式によって計算される.1 oX , cN ,ρX? N( xyz) =Σ( Fhkl?Fhkl)exp{ ? 2πi( hx+ ky+lz)}Vo,ここで, F X hklはX線回折測定によって得られた構造因c,子, F N hklは中性子構造解析によって得られた各原子の座標および温度因子を元に球対称の電子分布を仮定して計算された構造因子である.中性子構造解析によって直接的に得られた原子核の座標および温度因子を用いるため, X線のみでの変形電子密度図と比べて原理的には精度,確度の高い電子密度図が得られるとして,この手法を用いた電子密度解析が1970~80年代に多く報告された. X線に比べて中性子回折測定の制約が大きいことや,中性子回折で十分なsinθ/λ範囲の反射を得ることの難しさから近年ではこの手法による電子密度解析はほとんど報告されていないが, J-PARCをはじめとした次世代中性子源によって中性子回折測定の敷居が下がったことで再び現実的な解析手法となることを期待したい.(㈱独日本原子力研究開発機構J-PARCセンター大原高志)空間分解能とピーク分解能Spatial Resolution and Peak Resolution「空間分解能」とは,結晶格子中(実空間)で電子密度分布がどれだけ詳細に表現されているかを示す指標である.実空間での分解能を高くするためには,逆空間においてsinθ/λが大きい領域,すなわち,より高角側までのデータを収集する必要がある.そのため,「空間分解能の高いデータ」は,しばしば「高角側まで測定されたデータ」と言い替えられる.空間分解能の高いデータほど,電子密度分布図,ひいては原子の位置や種類についてより正確な情報をもたらす.「ピーク分解能」とは,粉末回折パターンにおいて回折ピークがどれだけ細かく分離できるかの指標である.通常,ピークの半値幅が目安となる.ピークの半値幅が狭いほど,重なったピークを分離しやすいため,「ピーク分解能が高い」と言う.(㈱リガク佐々木明登)340日本結晶学会誌第56巻第5号(2014)