ブックタイトル日本結晶学会誌Vol56No5

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概要

日本結晶学会誌Vol56No5

太田雄大,瀬戸誠図8二核鉄活性中心の基準振動モード.(Normal modes of dinuclear iron complex.)図7二核非ヘム鉄酵素モデル錯体のNRVSとDFT計算による解析.(NRVS and DFT analyses of dinucleariron enzyme model complexes.)錯体IとIIの分子構造(A)と, NRVSスペクトル(灰色線)とDFT計算によるシミュレーション(黒色線)(B)(各バンド(1-8)の基準振動モードは図8に示す).が強くなり,反結合性π軌道相互作用が弱まることが明らかにされ,高スピン状態の一酸素原子架橋構造(I)においては二酸素原子架橋構造(II)と比べて,バンドの分裂がさらに大きくなることが明らかにされた(図7B).これらの解析により得られた二核非ヘム鉄モデル酵素錯体の分光学的知見により,今後リボヌクレオチドリダクターゼ(RNR)の高原子価中間体Xおよび可溶性メタンモノオキシゲナーゼの高原子価中間体Qの分子振動構造の解明に寄与することが期待される.3.4単核非ヘム鉄酵素の研究例21)アミノ酸のヒスチジン側鎖および,グルタミン酸などのカルボン酸側鎖を配位した構造を有する単核非ヘム鉄酵素は,酸素活性化,各種基質酸化反応において機能することが知られている.それらの化学的機能は,神経伝達物質の産生,二次代謝産物の生成, DNA修復,および低酸素応図9NRVSおよびDFT計算による単核非ヘム鉄酵素の解析.(NRVS and DFT studies of a mononuclearnonheme iron enzyme, SyrB2.)SyrB2において生成するFe(IV)=O中間体の核共鳴非弾性散乱スペクトル(実測とDFT計算によるシミュレーション)(A)と鉄活性中心の基準振動モード(B)(Fe-XおよびTrans-axial stretchは(A)スペクトル中の領域3, Trans-axial bendは領域2, Fe-succinate stretchは領域1において観測されている).答のような数多くの重要な生物学的機能に関与している.これらの酵素の触媒サイクルにおいては,いくつかの酸素活性化の反応ステップを経て,酸化反応において鍵となる高原子価鉄オキソ(Fe(IV)=O)中間体を生成すると考えられており,その分子機構の解明が望まれている.Pseudomonas syringae pv. syringaeという細菌から得られた単核非ヘム鉄酵素の一種,ハロゲナーゼSyrB2(シリンゴマイシン生合成酵素2)において生成される反応機構の鍵となる反応中間体に対して,核共鳴非弾性散乱分光を行いた分子構造の解明が行われた.この酵素はFe(IV)=O中間体を利用して,天然基質L-トレオニン(L-Thr)の場合は引き続いてハロゲン化を引き起こす一方で,非天然性基質L-ノルバリン(L-Nva)の場合にはヒドロキシル化を引き起こすことが知られている.本研究ではFe(IV)活性中心にCl ?とBr ?とが結合したSyrB2のFe(IV)=O中間体の測定が行われた.図9に示すように, SyrB2が取り得る構造に対してDFT計算によるスペクトルのシミュレーショ334日本結晶学会誌第56巻第5号(2014)