ブックタイトル日本結晶学会誌Vol56No5

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概要

日本結晶学会誌Vol56No5

進化した粉末結晶構造解析ツールた. EXPOを開発したAltomareらは, BB-BC法とSA法を組み合わせたHBB-BC法を開発し, 10)これを実空間法に適用した. HBB-BC法のアルゴリズムを図4に示す.ステップ1~5までが通常のBB-BC法と同じである.ステップ6で, Altomareらは比較的高速な条件でSA法を行い,ステップ5のBig Bangで生成された候補のうち,最もR wpの大きな候補からスタートしてモデルの最適化を行うこととした.表1にSA法とHBB-BC法の結果の比較を示す.ほとんどの場合において,計算時間が半分以下になったことがわかる.現在では, EXPOの実空間法は, SA法ではなく, HBB-BC法がデフォルトとなっている.3.構造精密化とMogul未知粉末結晶構造解析の最後のステップである構造精密化は,単結晶構造解析の精密化ステップと異なり,やはり一筋縄ではいかない.何度も述べているように,回折データの空間分解能の低さが原因で,通常の精密化ではすべての原子位置を正確に求めることができない場合が多い.そのため,化学的な情報,すなわち原子同士の結合距離や結合角度に束縛条件(リストレイン)を設定して精密化するのが一般的である.リストレインを設定したCost functionは以下の式で表される.図4HBB-BC法の流れ.(Flow chart of the HBB-BC algorithm.)Ry y calwp =∑1 2i ? i sres∑12d dyd 2 0i? iiσ( )iσi( ) +( i )( )dここでd 0iは,理想的な結合距離や結合角度を表し,σiは,それぞれの結合距離や結合角度の理想的な値からのずれの許容量を表す.気相中の分子構造ならば,分子軌道計算などにより理想的な結合距離や結合角度を求められるが,結晶中では隣接した原子同士の静電相互作用やパッキングの要請などから,簡単に理想値を求めることはできない.ところで,有機化合物や無機化合物の結晶構造データベースは世の中にいくつか存在する.中でも, CCDCが作製している有機化合物の結晶構造データベースシステムCSDS 11)(Cambridge Structural Database System)には,Mogulというツールがあり,部分構造を入力すると,その部分構造を含むすべての有機化合物を検索し,部分構造に含まれる結合距離や結合角度の分布を知ることができる.得られた分布から,その中央値(または平均値)を結合距離や結合角度の理想値に,分布の幅をずれの許容量として2表1SA法とHBB-BC法の比較.(Comparison of calculation time between SA and HBB-BC.):解析済みの結晶構造と決定された初期構造における各原子位置の差の平均値. N:実空間法で設定した自由度の数. T:計算に要した時間(分).Formula SA BBN SAN HBB-BC T SA(min.)T HBB-BC(min.)C 72 Cl 84 Ni 2 P 4 H 600.2670.265873.348.6C 8 H 8 F 3 N 3 O 4 S 20.1880.18771024.96C 13 H 18 O 20.0490.0487829.76.2[NiCl(C 2 5 H 5 N)2]n0.2390.2234510036[AgI(C 7 H 10 N 2)]n0.2280.203101035.416.5C 16 H 19 N 3 O 4 S・3H 2 O0.0840.0968350259KUO 2PO 4・3D 2O0.2690.22551022260C 7 H 9 N0.1310.15123635.1C 8 H 15 N 7 O 2 S 30.1710.1692313039.2C 10 H 16 N 6 S0.0890.14482.344.6C 12H 12N 2O 2S0.1190.1594173.928C 96H 104N 16O 48S 8Na 80.1580.15499256.978.8日本結晶学会誌第56巻第5号(2014)309