ブックタイトル日本結晶学会誌Vol56No1

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日本結晶学会誌Vol56No1

クリスタリット金属製部品の疲労強度の向上や,腐食環境で使用される金属部材の応力腐食割れの防止対策として産業界で広く使用されている.近年,新しいピーニング手法として,レーザーアブレーションあるいはレーザープラズマが膨張する際の反力を利用するレーザーピーニング,キャビテーションの崩壊圧力を利用するキャビテーションピーニング,超音波をショットの駆動力として使用する超音波ショットピーニングなどが注目され,それぞれの特徴を活かした研究開発が行われている.(㈱東芝電力・社会システム技術開発センター佐野雄二)Lienard-WiechertポテンシャルLienard-Wiechert Potential点電荷が一般的な運動をした結果生じる電磁場を与えるベクトルおよびスカラー遅延ポテンシャルである.点電荷の運動は, Maxwell方程式の電場に関するGaussの法則における電荷密度変動とAmper-Maxwellの法則における電流密度の変化をもたらす.それらのみを与えて, Maxwell方程式を解くことで得られる.フランスの物理学者Alfred-Marie Lienardが1898年に,その2年後に,ドイツの地球物理学者Emil Johann Wiechertが独立に見出した.この理論を用いることで,運動物体からの電磁波放射の典型である双極子放射が電荷と観測点の距離に反比例し,電荷の加速度に比例することが導かれる.(慶應義塾大学理工学部,理化学研究所放射光科学総合研究センター中迫雅由)Maxwell方程式Maxwell’s EquationJames Clark Maxwellによって1864年に数学的に整理統合された電磁気現象を記述する古典電磁気学の基本方程式である. Faradayの電磁誘導の法則, Amper-Maxwellの法則,電場および磁場に関するGaussの法則から構成される連立偏微分方程式であり,普遍定数として真空の誘電率と真空の透磁率を含む.電場,磁場,電流密度,電荷密度などが与えられるべき,あるいは,求めるべき物理量となる.例えば,真空中でのFaradayの電磁誘導の法則, Amper-Maxwell法則を組み合わせて解けば,電磁波が光速で伝播する横波であることが容易に理解でき,そのことはHertzによって実験で確かめられた.また,電磁波の散乱や放射現象もこの一組の方程式で記述できる.(慶應義塾大学理工学部,理化学研究所放射光科学総合研究センター中迫雅由)ス(方位磁石)を近づけると,片側のコンパスのN極がもう一方のコンパスのS極に近づくように回転する.したがって,各々の磁石は2つのコンパスを結ぶ方向に平行になろうとする.こうした異方的な相互作用を,コンパス型相互作用と呼ぶ.特に,量子力学で記述されるミクロな磁石であるスピン間に働いた場合,量子コンパス型相互作用と呼ばれる.スピン軌道相互作用の大きなスピン系で量子コンパス型相互作用が働くことが,理論的に予言されている.また,遷移金属化合物における軌道自由度を擬スピンで表現した場合にも,同様の相互作用が現れることが知られている.(東京大学物性研究所大串研也)ポストペロブスカイト構造Post-Perovskite Structureケイ酸マグネシウムMgSiO 3が超高圧で有する結晶構造のこと.結晶系は斜方晶系,空間群はCmcmである.ペロブスカイト型MgSiO 3の高圧相であるため「ポスト」ペロブスカイト構造と呼ばれるが,以前から存在する物質に倣ってCaIrO 3構造と呼ばれることもある.ポストペロブスカイト型MgSiO 3の安定な圧力温度条件から,地球マントルの最深部に相当するD”相の主要鉱物だと考えられており,同相の発見がなされた2004年以降,地球科学分野で爆発的に研究がなされている. MgSiO 3のほかにも,複数の酸化物,フッ化物,硫化物,セレン化物,ヨウ化物が,ポストペロブスカイト構造をとることが知られている.(東京大学物性研究所大串研也)カーケンダル効果Kirkendall Effectカーケンダル(E. O. Kirkendall)は,その生涯で著した全三報の論文のなかで,二種類の合金を接触させて加熱すると,境界面が構成原子の相互拡散によって移動する現象を報告した.例えば純銅と黄銅(CuとZnの合金)からなる拡散対試料を加熱すると,黄銅から純銅へのZn原子の拡散が純銅から黄銅へのCu原子の拡散よりも速いことから,異相境界面は最初の境界面の位置よりも黄銅側へ移動する.金属や合金中の原子拡散機構が直接交換やリング交換であるとした従来の理論を覆し,空孔(VacancyExchange)機構を提唱した功績は大きい.(名古屋工業大学大学院工学研究科福田功一郎)量子コンパス型相互作用Quantum Compass Interactionスピン間に働く異方的な相互作用のこと. 2つのコンパ日本結晶学会誌第56巻第1号(2014)71