ブックタイトル日本結晶学会誌Vol56No1

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日本結晶学会誌Vol56No1

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概要

日本結晶学会誌Vol56No1

クリスタリットX線自由電子レーザーXFEL真空封止型アンジュレータIn-Vacuum Undulatorアンジュレータは放射光蓄積リング型加速器の直線部に,多くの場合永久磁石を用いた交番磁場を作り,そこで電子(あるいは陽電子)が蛇行しながら発生する放射光が干渉して准単色放射光を発生する装置であり,挿入光源の一種である.加速器の電子の通路は超高真空が必要であることから,初期のアンジュレータは超高真空チェンバーの外部に磁石を並べるものであった.この磁石を超高真空の中に入れてしまったものが,真空封止型アンジュレータである.磁石を真空外に置くと,短い磁場周期長ではビーム位置に磁場が届かない.アンジュレータから出る準単色光の波長は,磁場周期長に比例し,電子のエネルギーの自乗に反比例するので,真空封止型アンジュレータで可能となる短磁場周期長を用いると低い電子エネルギーで短波長X線を発生することが可能となる.(㈱独理化学研究所放射光科学総合研究センター石川哲也)Cバンド線形加速器C-Band Linear Accelerator線形加速器とは粒子を一直線上で加速する加速器であり,粒子加速にはマイクロ波を用いる. 1960年代にアメリカスタンフォード大学で建設された2マイル線形加速器(現在はSLAC国立加速器研究所というDOE傘下の研究所となり,加速器自体もLCLSに使われている)では,周波数2856 MHzのSバンド帯域が用いられ,その後世界の多くの線形加速器がこの周波数を採用した.この中には日本のKEK線形加速器や, SPring-8の入射用線形加速器が含まれる.マイクロ波の周波数を上げると,原理的に加速勾配が大きくなり,短い線形加速器で高エネルギーに達することが可能となる.かつて,リニアコライダのR&DとしてスタンフォードやKEKでSバンドの4倍の周波数のXバンド帯域での線形加速器の研究が行われたが実用化には至らなかった. CバンドはSバンドの倍の周波数5712 MHzを使うものであり, KEKで開発され, SACLAに導入された.(㈱独理化学研究所放射光科学総合研究センター石川哲也)X線領域の自由電子レーザー(Free Electron Laser:FEL)の略称.原子に束縛された電子の遷移を用いる従来のレーザーと異なり, FELでは,光速度近くまで加速した高密度の電子ビームを利用する.周期的磁場装置であるアンジュレータに電子ビームを導入し,光と電子の相互作用を利用して,電子ビーム内に光の波長周期の密度変調をつけながら,コヒーレントな光を生成する.長波長領域の自由電子レーザーは,アンジュレータに光共振器を組み合わせて構成されるが,短波長のXFELでは,光共振器の代わりに長尺のアンジュレータを用いたシングルパス方式が主流である.(理化学研究所放射光科学総合研究センター矢橋牧名)フェムト秒連続結晶解析SFXSerial Femtosecond Crystallographyの略称. XFELを用いた結晶構造解析の基本的なスキームの一つ. SFXでは,XFELのパルスごとにフレッシュな結晶試料(主に微結晶)を視野に導入し,回折像の取得を行う.主な特徴としては,(1)試料の作成・ハンドリングが容易,(2)時間分解計測への拡張性,(3)CW光源に比べて放射線損傷の影響を低減(“Diffract-before-destroy”参照)があげられる.試料インジェクターとして,溶液ジェット,液滴,高粘調媒体(ゲル)などの方式の開発が行われている.(理化学研究所放射光科学総合研究センター矢橋牧名)破壊前の回折計測Diffract-Before-Destroy試料にXFEL光を照射すると,イオン化過程を経て最終的に試料は破壊(destroy)されるが, XFEL光のパルス幅がフェムト秒程度まで十分短い場合には,破壊する前の回折像(diffraction image)を取得できる,という考え方. SFXやコヒーレント回折イメージング(CDI)を含む, XFELを利用した回折計測における基本的なコンセプトの一つ.(理化学研究所放射光科学総合研究センター矢橋牧名)ピーニングPeening機械的な衝撃で金属材料を塑性加工することにより,表面に加工硬化層あるいは圧縮応力層を付与する表面処理方法であり,固体内で転位や磁束を拘束するピン止め効果(ピニング, pinning)とは異なる概念である.高速に加速した多数の小鋼球(ショットと呼ぶ)を材料表面に吹きつけ,表面の塑性加工を行うショットピーニングが古くから知られている.軽量化が要求される自動車や航空機などの70日本結晶学会誌第56巻第1号(2014)