ブックタイトル日本結晶学会誌Vol56No1

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日本結晶学会誌Vol56No1

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概要

日本結晶学会誌Vol56No1

談話室高難易度ターゲットの構造解析に大きく寄与すると思われる, 3 A以下の低分解能回折データから良質な構造モデルを得るためのCOOTとREFMAC5を使った構造精密化の手順などについて発表があった.これらのアカデミックプログラムに加え,充実したソーシャルイベントも準備されていて,初日のウエルカムミキサーから始まって,ビクトリア・ハーバークルーズ,アバディーンハーバーの船上レストラン,そしてフェアウエルパーティーと盛り沢山であった.パラレルセッションということも有り,聴きたくても聴けない講演もあったが,充実した学会参加であった.AsCA’13に参加して(生物分野)門祐示(大阪大学未来戦略機構)2013年12月7日~10日,香港科技大学(The HongKong University of Science & Technology, HKUST)において, 2013 Asian Crystallographic Association Meeting(AsCA’13)が開催された.学会期間中の香港は気温20℃前後と暖かく,会場ではTシャツ姿で過ごす学生も見られた. HKUSTでのAsCA開催は2004年に次いで2回目であるが,私が初めて参加した国際学会もAsCA’04であり,9年ぶりに再訪できることになった.私は鑽石山(Diamond Hill)にあるPenta Hotelに滞在した.学会HPにオープンから2ヶ月との紹介があり,空きもあったためこのホテルを選んだのだが,スタイリッシュな雰囲気で,アルミ製のいすや,モノトーンで香港の町並みがプリントされたクローゼットなどが配置されていた.バス・トイレの扉が鏡になっていたのには,さすがに驚いてしまった.周囲は工場と高層住宅が入り混じったような地域で,香港と聞いてよく想像するような煌びやかな看板や飲食店はなかったが,外国にやってきたという実感がわいてきた.会場のHKUSTは牛尾海を見下ろす景色のよい高台にあり,用意されたシャトルバスで,約20分で到着した.学HKUSTのエントランスホール会会場は開放的で,エスカレータをはさんだ2面のフロアに講演会場とポスター会場があった.東京大学の濡木先生は,膜トランスポーターの中でもアンチポーターに分類されるMATE, CAXの構造機能相関についてのご講演であった.発現に最適な株をスクリーニングし, Fura2を用いた細胞内Ca 2+濃度の変化からCa 2+排出能を確認し, LCP法で膜タンパク質を結晶化,構造解析し機能相関を論じる,という内容であった.酸性よりのpHでは,水酸基と水素結合していたグルタミン酸が反発していたことから,水素の有無を判断し反応機構を示していたのが印象に残った.XFELに関しての講演も充実していた.シンガポール国立大学のDuane Loh氏は米国カリフォルニアにあるLinacCoherent Light Source(LCLS)でのXFELと, X線用検出器とTOF-MSを組み合わせた系を利用して,すすエアロゾルの観測に成功したという発表であった. 10 ?6~10 ?7 mオーダーの物質の観測法は,光学顕微鏡とX線結晶解析法がカバーする領域のちょうど中間に位置しており,前者は分解能の問題,後者は単結晶が得られない点から,観測は困難との認識があった.そのため発表で鮮明なすすエアロゾルの写真が提示されたことに大変驚いた.またSPring-8の城地氏は, SACLAのハード面での改良について講演されていた.微小結晶含有サンプルを打ち出す連続フロー技術によって,データセット収集に必要なサンプル量を100 mgから10μgと飛躍的に減らすことに成功したとのことである.結晶化が困難なサンプルは,是非SACLAを利用したいと思った. XFELに関する発表は,高いコヒーレント性や時間分解能を利用した研究と,どのようにしてXFELの長所を伸ばすかという2つに大別されていた.いわゆる結晶を必要としない構造解析法である, X線回折顕微法のための試料調製や, fsパルス波を利用した反応中間体トラップの研究などが数多く見られた.今年は世界結晶年(IYCr2014)であるため, 9日にはIYCr2014 Special Sessionが設けられていた. IUCr会長のG. R. Desiraju氏をはじめ,関係者各位による活動報告がなされた.結晶のプロモーションビデオや1記念切手の作成,結晶成長大会の開催など,多くの魅力的なイベントが企画されていた.また昨年10月に初の南米での学会,ラテンアメリカ結晶学会がアルゼンチンで開催され,ACA, ECA, AsCAと並ぶ4番目の結晶学連合であるLatin-American Crystallographic Association(LACA)が設立されるそうである.結晶学のグローバル化が進むニュースで,大変うれしく思った.本学会では5つのワークショップ(OLEX2, CCP4,Bruker APEX2, Bruker PROTEUM2, CCDC)が開催されており,これまでワークショップに参加したことがなかったので, 8日のCCP4ワークショップに参加した.各自ソフトをインストールした自前のノートパソコンを使い,反68日本結晶学会誌第56巻第1号(2014)