ブックタイトル日本結晶学会誌Vol56No1

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日本結晶学会誌Vol56No1

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日本結晶学会誌Vol56No1

談話室最後に今回のAsCA2013では本当に貴重な経験をさせていただきました.学部4年でこのような経験ができたことは,間違いなく自分の成長につながるものになると確信しています.学生の身である自分にとって,今回の旅費は非常に負担のかかる額でしたが,今回の日本結晶学会国際会議参加助成のおかげで,捻出の時間を発表の準備に当てることができ,本当に感謝に堪えません.本プログラムの支援先であるRIGAKU社の方々ならびに日本結晶学会の皆様,そして指導教官である吉朝先生をはじめとする共同研究者の皆様にこの場を借りて深く御礼申し上げます.奇しくも今年は世界結晶年ということで,成長した自分を見せる絶好の機会であると考えます.この経験を活かし,来年の世界結晶年に向けてより一層研究活動に励むことを誓います.Structure refinement of legrandite Zn 2 AsO 4(OH)・H 2 O陣内聡1,吉朝朗1,杉山和正2,有馬寛2,志村玲子2,宮脇律郎31熊本大学理学部理学科, 2東北大学金属材料研究所, 3国立科学博物館私は熊本大学理学部の地学科に在籍しており,鉱物学の,ひいては地球環境科学の研究の一環として,鉱物結晶学に関するテーマの研究を行っています.今回の学会では(Structure refinement of legrandite Zn 2AsO 4(OH)・H 2O)という演題で,単結晶X線構造回折によって得られた,天然鉱物の1種であるLegranditeの結晶構造についてポスター発表を行いました. legranditeは,淡黄色から黄褐色の亜鉛ヒ酸塩鉱物で,関連鉱物は多数存在しますが,それぞれ構造は大きく異なっています. McLean et al.(1971)によってlegranditeの構造解析が行われていますが,水素結合や配位席の歪量,関連鉱物との共通性など不明でした.今回, Oujela Mine, Mapimi, Durango, Mexico産legrandite(化学組成Zn 2AsO 4(OH)・H 2O)の結晶構造精密化をリガク社製単結晶構造解析システム(RAPID)により行い,これまで不明であった水素位置を差フーリエ法により確定し,座標位置を決定するとともにBond-valence法によって電荷バランスと水素結合関係を明らかにしました.Legranditeの構造は, 2種類のAsO 4四面体と1種類のZnφ6八面体(Zn1席), 3種類の大きく歪んだZnφ5複三角錐面体(Zn2~Zn4席)(φ=O, OH, H 2O)によって構成されております. Zn多面体は頂点と陵を共有した独特の構造単位を形成し, AsO 4四面体がこの構造単位を繋げる形でフレームワークは構成されます. 5配位席はイオン半径から予測される距離を有していますが, Zn(3)?O(1)の原子間距離は異常な値を示しています. 6席の水素原子は,強弱さまざまな水素結合を形成しており,これにより過剰の原子価を供給される酸素原子には配位数の低下が見られます. Zn(3)?O(1)の原子間距離の異常性も,水素結合による原子価の供給が原因であると推測されます.また水素席は, c軸にのみ平行なトンネル構造を有しています.本研究では,この方向にプロトン導電の経路があり,伝導性に大きな一次元異方性があると推測しております.AsCA’13 Hong Kong(物理分野)鬼柳亮嗣(日本原子力研究開発機構)2013年のAsCA(AsCA’13)は香港科学技術大学で行われた.私にとっては北京で行われたAsCA’09以来、2度目の中国となった.空港から中心部まではExpress Trainで快適に移動できたが,そこからホテルまでが苦労した.アクセス方法がわからなかったのでタクシーを利用したが,英語がまったく通じない.何とかホテルの近くの駅(正確にはホテルの近くの駅の近く)まで連れて行ってもらったが,自分がどこに立っているのかがわからない.仕方なく,中心部の人ごみの中をスーツケースを引き摺りながら小一時間程歩き回り,何とかホテルを見つけた.お陰で,香港の繁華街(九龍地区)をよく見ることができた(何度も同じところをグルグルとでしたが).街にはとにかく人が溢れており,田舎者には,人にぶつからないように歩くだけで大変だった.雰囲気としては,多少ごみごみとしているものの,多くのレストランや商店が軒を連ねており活気とエネルギーに溢れていた.一角には超高級ブランド店がいくつもあり,妻と一緒ではないことに安堵した.さて,学会会場の香港科技大学は中心部から地下鉄とバスを乗り継ぎ1時間程の場所(東海岸)にあった.緑に囲まれた山間に位置し,眼下には海が広がり,非常に静かで綺麗なキャンパスであった.講演はStructural Biology, Chemical Crystallography,Physical Techniqueの3つの分野に大きく分かれており,それぞれの分野の中でさらに6個程度の小セッションに分かれていた.この中から物理に関する講演のうち,印象に残ったものをいくつか紹介させていただく.2日目午前に行われた“Computation in Crystallography”では,電子密度解析の新しい手法としてX-ray wavefunc-64日本結晶学会誌第56巻第1号(2014)