ブックタイトル日本結晶学会誌Vol56No1

ページ
68/92

このページは 日本結晶学会誌Vol56No1 の電子ブックに掲載されている68ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

日本結晶学会誌Vol56No1

ブックを読む

Flash版でブックを開く

このブックはこの環境からは閲覧できません。

概要

日本結晶学会誌Vol56No1

談話室晶学に携わっている教授同士はお互いをよく知っており非常にフレンドリーな関係を築いていることを感じた.今回は自身の初の国際学会での口頭発表もあり,非常に充実した会議であった.以前よりも英語に慣れ親しんできたこともあって英語講演が理解できるようになり,より多くの情報を得ることができた.多少のミスコミュニケーションもあったが,普段とは異なる文化圏の人々とコミュニケーションを取ることで,違った感覚を知ることができた.今後も積極的に国際学会に参加していきたいと思った.最後に,日本結晶学会に本会議の参加および渡航費などの支援をしていただいたことを感謝いたします.Design of Coordination Networks Using Multi-interactive Ligand TPHAP ? viaWeak Intermolecular Interaction小島達弘1,山田智文2,河野正規11 POSTECH AMS, 2岐阜大学工学研究科配位性ネットワーク錯体は配位子の形状や金属の配位環境に応じてさまざまなネットワークトポロジーが形成され,有機化学あるいは錯体化学によるアプローチのみならず,結晶学的なアプローチによってもそのネットワークトポロジーを制御することが可能である.例えば,同じ有機リンカー配位子と金属コネクターであっても溶媒や温度などの実験条件に応じていくつかの異なる配位性ネットワークを形成することが可能である.われわれは過去にTPT(=2,4,6-tris(4-pyridyl)triazine,図1)とハロゲン化亜鉛を用いて結晶化速度を制御することによって,速度論的生成物である粉末微結晶ネットワークと熱力学的生成物である単結晶ネットワークを作り分けることに成功した. 1)さらに瞬間合成(図2, i))によって得られた速度論的生成物である準安定な粉末微結晶[(ZnI 2)3(TPT)2]n・5.5(C 6H 5NO 2)(H 2O)(1)は大気圧下で加熱することによって相転移を起こし(図2, ii)),熱力学的に安定な粉末微結晶ネットワーク[(ZnI 2)3(TPT)2]n(2)(サドル型多孔性ネットワーク)を形成することを明らかにした.いずれの粉末微結晶も放射光を用いた非経験的粉末X線構造解析によって構造が明らかにされ,弱い分子間相互作用がネットワーク形成に作用していることがわかった.以上の結果から,速度論的および熱力学的生成物を作り分けるには弱い分子間相互作用を制御することが最も重要な鍵であることがわかった.われわれは弱い分子間相互作用を捕えることのできる多点相互作用点を有する配位子TPHAP ?(=2,5,8-tri(4'-pyridyl)-1,3,4,6,7,9-hexaazaphenalene,図1)の合成に成功した. 3) TPHAP ?は主に3つの特徴, 1三角形型の3カ所の配位サイト, 2中心骨格の広いπ共役面, 3中心骨格の6カ所の水素結合アクセプターサイト,を有する.これらの多点相互作用性は弱い分子間相互作用を認識するのに適している.本研究ではTPTの相互作用性と比較することでTPHAP ?の多点相互作用性がネットワーク形成に及ぼす効果を明らかにするために, 2種類の手法,気相結晶成長および液相結晶成長によってネットワーク形成を試みた.従来の最終生成物2は速度論的生成物1を大気圧で300℃に加熱することによる固相相転移(図2, ii))によってのみ粉末微結晶として得られ,その構造は非経験的粉末X線構造解析によって明らかにされた.また,原料であるTPTとヨウ化亜鉛を加熱するだけでは最終生成物を得ることはできず(図2, iii)),中間体として速度論的生成物1を形成する必要があった.しかし,原料のTPTとヨウ化亜鉛を減圧下(0.1 Torr)で500℃に急速に加熱することによって,気相を通じた単結晶を形成することに成功した(図2, iv)).単結晶X線構造解析によってこの単結晶が非経験的粉末X線構造解析結果と同一の細孔を有するサドル型多孔性ネットワーク2であることが明らかになった.これは気相成長による多孔性配位ネットワーク錯体の形成の最初の例である.また,中性のHTPHAPとヨウ化亜鉛を用いて同様に気相成長によってネットワークZnI 2HTPHAP(3)の形成に図1相互作用性三座配位子図2TPTとZnI 2のネットワーク形成の模式的エネルギーダイアグラム60日本結晶学会誌第56巻第1号(2014)