ブックタイトル日本結晶学会誌Vol56No1

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日本結晶学会誌Vol56No1

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概要

日本結晶学会誌Vol56No1

AsCA’13 Hong Kong参加記晶構造で,同じJ会合体様の一次元積層構造が形成されていることがわかった.末端基の影響は分子長軸方向の分子対の配向にみられ,それが一次元部分構造同士の並び方に差異を生じさせていた.このことが, J会合体様の二次元分子層内の分子配列の変化を生む要因になっていることがわかった.AsCA’13 Hong Kong参加報告書小島達弘(浦項工科大学校)アジア結晶学連合会議(AsCA’13 Hong Kong)が2013年12月7日から10日まで香港科技大学(HKUST)にて開催された.私はRising Stars Oral Presentation award inAsCA’13に選出され, MS-2 Metal-Organic StructuralChemistryにて口頭発表を行った.本報告書では学会を通じての感想および発表を行った研究内容の概略を併せて報告する.本会議は全体的にアットホームな雰囲気にオーガナイズされた学会であった.何か変更がある度にLocal OrganizingCommitteeの代表である香港科技大学(HKUST)のIan D.Williams教授が各会場に顔を出しては自らアナウンスをして回るという光景が何度も見られた.初日はOlex2 Asian Workshopに参加した.ダラム大学のHorst Puschmann博士によるOlex2による構造解析の実演であった.グラフィックの見やすさと便利な機能の多さから,慣れてしまえば非常に有用であると感じた.これから構造解析を始める研究者にはぜひ推薦したい.私も操作をマスターしようと現在格闘中である.2日目は自身の発表が午前中の最後に控えており,これが国際学会での初めての口頭発表であった.私が発表を行うMS-2 Metal-Organic Structural Chemistryでは自身の発表までほかの講演は聞かずに発表の最終確認に集中するつもりでいたが,最初の講演者ストックホルム大学のXiaodong Zou教授の講演「New TEM Techniques For SolvingUnknown Structure of Submicron- and Nano-Sized Crystals」が興味深かったため思いのほか聞き入ってしまった.個人的に電子線回折に興味があったため勉強中であったのだが,最新のTEM技術によってどこまで構造の可視化に近づけるかを知ることができた. Xiaodong Zou教授のグループはまぎれもなく世界トップクラスのTEM技術を有しており,主にゼオライトなどの硬い材料が中心であったが,単位格子内の原子配列を二次元的に直接観察するのみでなく,三次元的な配置まで把握することが可能であることに驚いた.また,有機物を含んだMOFの例も紹介され,今後MOF分野へどんどん応用されるであろうことを予感した.いざ自身の発表では緊張しつつも常に聴衆の方を見ることを意識して発表したが,いくつかのグループがスライドの写真を撮影していたのが気になった.特にこれといった質問も出ず終わってしまい,何の関心も得られなかっ日本結晶学会誌第56巻第1号(2014)たのではないかと不安になったが,講演後に最初の講演者のXiaodong Zou教授が直接質問に来られて互いに意見交換をすることができたことは非常に良い経験となった.その晩は船の上から香港の夜景を臨むという贅沢な思いをした.その道中あるいは船の上で,私の講演を聞いてくださった海外あるいは日本の先生方に非常に良かったとのお言葉をいただきようやくほっと一息つくことができた.また,日本結晶学会会長の坂田誠先生との記念写真を撮影していただいた.余談であるが,その日の帰りは地下鉄でホテルの最寄駅まで向かい,駅からの道のりを知らなかったためにタクシーを利用した.香港のタクシー運転手は英語に堪能であるため,行き先を「Penta Hotel」と告げたのだが,発音が悪かったために徒歩5分の距離をタクシーで20分程かけて「Panda Hotel」に連れて行かれた.英語での口頭発表を終えたばかりであったが,いかに自分の発音が未熟であるかを思い知らされ,講演がきちんと伝わっていたのか再度不安になった.3日目のMS-8 Dynamic Aspects of Crystalsのセッションはいずれも構造を紹介するだけでなく,結晶内で起こる化学反応をX線によって視るというテーマを中心としていた.その手法も単結晶,粉末,時間分解によるX線構造解析など,ターゲットによってさまざまであり近年のX線技術の進歩を感じた.特に粉末X線構造解析に関しては4日目のKeynote Lectureでカーディフ大学のKennethD. M. Harris教授が「Structure Determination of MolecularSolids from Powder X-RAY Diffraction Data: CurrentOpportunities and "State of the Art」という講演でさまざまな構造解析例を紹介しており,その可能性の広さを知った.Farewell Partyは非常に小さなホールで立食形式で行われ,その場でさまざまな教授陣へのプレゼントが贈呈され,終始アットホームな雰囲気で締めくくられた.長く結坂田会長との記念撮影59