ブックタイトル日本結晶学会誌Vol56No1

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日本結晶学会誌Vol56No1

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概要

日本結晶学会誌Vol56No1

福田功一郎図5 1600℃で100時間加熱したLa 2Si 2O 7/La 2SiO 5/La 2Si 2O 7拡散対の偏光顕微鏡写真.(Optical micrograph,taken under crossed polars, of La 2Si 2O 7/La 2SiO 5/La 2Si 2O 7 couple annealed at 1600℃for100 h.)矢印はポーラライザー(P)とアナライザー(A)の振動方向を示す.内側のLa 2SiO 5部分は,アパタイト型ケイ酸ランタン(LSO(I))多結晶体に完全に置き換わる.両側のLa 2Si 2O 7部分はLSO(II)多結晶体へ一部変化し,最も外側は未反応のLa 2Si 2O 7が残存する. LSO柱状結晶粒子はほぼ対角位にある.(=2L I)なので(L I=327.5μm),この積層構造体は64.6時間の加熱で生成する.さらに35.4(=100-64.6)時間アニールされる過程で, LSO多結晶体と未反応La 2Si 2O 7との間に熱力学的平衡が成立すると予想される.先のEP-MAの結果は,このLSOの組成式はLa 9.33Si 6O 26であることを示唆する.LSO(I)の結晶構造を空間群P6 3/mで精密化したところ(図6),組成式は予想どおりLa 9.33Si 6O 26(x=y=0)であった. 5)奥寺ら14)-17)はLa 9.33Si 6O 26組成の単結晶を構造解析し,結晶構造から酸化物イオン伝導機構を結晶化学的に考察した.今回の構造モデルは, Si(Wyckoff位置:6h)に配位する酸化物イオン(O1とO2, O3)のうち, O3席(12i)が2つ(O3AとO3B)に分裂しており,奥寺らの構造モデルと相違がある.一方, c軸上のO4席(2a)を占める酸化物イオンの熱振動楕円体は,両モデルともc軸方向に著しく伸長する.3.2 La 9.50Si 6O 26.25組成の配向多結晶体1600℃で50時間加熱したLa 2SiO 5/La 2Si 2O 7/La 2SiO 5拡散対(図4b)は, La 2SiO 5とLa 2Si 2O 7が過不足なく反応して全体が単相のLSO多結晶体に変化し,その結果「LSO(I)/LSO(II)/LSO(I)」の積層構造が形成されていた. 6) LSO(II)の厚みは430μm(=2L II)と比較的薄いので図6La 9.33Si 6O 26の構造モデル(空間群P6 3/m).(Structural model of La 9.33Si 6O 26.)各原子席を75%楕円体で表す. LaイオンはLa1席(4f)とLa2席(6h)を占め,占有率はそれぞれ0.852と0.988である.ソフトVESTA 18)による描画.(L II=215μm),この積層構造体は50時間以内の加熱で生成する.中心部分から取り出したLSO(II)多結晶体の組成式はLa 9.50Si 6O 26.25(x=0.083, y=0)であり,格子間に過剰な酸化物イオンが存在する.過去に報告された格子間席はすべて一般位置(12i)であったが,今回見出された席(6h)は鏡映面上に位置する. c軸上のO4席(2a)の一部が2つに分裂し,同じc軸上で新たな席(4e)が生成することも,この結晶構造の特徴に挙げられる.席占有率は前者が約3/4で後者は約1/8であった.回折法で求めた先の化学組成(La 9.50Si 6O 26.25)は,La 2SiO 5/La 2Si 2O 7拡散対で生成するLSO多結晶体の平均組成(La 9.47Si 6O 26.21)にほぼ一致する.したがってLSOの生成反応終了後にアニールされる過程で, LSO多結晶体全体が熱力学的平衡に到達すると予想される.3.3 La 9.50Si 5.87O 26組成の配向多結晶体1600℃で100時間加熱後のLa 2SiO 5/La 2Si 2O 7/La 2SiO 5拡散対(図4c)は,最も外側には未反応のLa 2SiO 5が残存し,その結果「La 2SiO 5/LSO(I)/LSO(II)/LSO(I)/La 2SiO 5」の積層構造が形成されていた. 7) LSO(II)多結晶体の厚みは510μm(=2L II)なので(L II=225μm),内側のLa 2Si 2O 7部分がLSO(II)多結晶体へ完全に置換するまでに69.6時間を要する.生成直後のLSOには過剰な酸化物イオンが格子間に存在し,一般式はLa 9.33+2xSi 6O 26+3x(x>0, y=0)で表される.引き続き30.4(=100-69.6)時間アニールされる過程で,このLSOと外側のLa 2SiO 5との間で式(5)の反応が起こり, Si席に欠損が生じる.3La 9.33+2xSi 6O 26+3x ? 1.5xSiO 2→3La 9.33+2xSi 6?1.5xO 26(y=1.5x)(5)LSO(II)結晶の構造を精密化した結果, Si席の占有率は0.979となり欠損が確認できた.組成式はLa 9.50Si 5.87O 26(x=0.087, y=0.131)であった.46日本結晶学会誌第56巻第1号(2014)