ブックタイトル日本結晶学会誌Vol56No1

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日本結晶学会誌Vol56No1

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概要

日本結晶学会誌Vol56No1

c軸配向アパタイト型ケイ酸ランタン多結晶体の作製と酸化物イオン伝導表1加熱温度による速度定数K iと反応次数nの値.(K i- and n-values with annealing temperature.)温度/℃LSO(I)多結晶体LSO(II)多結晶体K I / mnK II / mn16006.0×10 ?70.514.5×10 ?70.5115503.9×10 ?70.522.9×10 ?70.5315002.9×10 ?70.522.2×10 ?70.51力が十分に緩和されると予想される.実際, LSOとLa 2SiO 5(空間群P2 1/c), La 2Si 2O 7(空間群P2 1/c)の室温から1200℃までの格子定数変化を高温X線粉末回折法で決定し,異方性および平均の線熱膨張係数(CTE)を比較した. 13)接合界面はLSOのa軸に平行であり, a軸方向のCTEの値は4.8-5.9×10 ?6 K ?1である.ランダム配向多結晶体では,平均のCTE値は4.9×10 ?6 K ?1(La 2SiO 5)と6.0×10 ?6 K ?1(La 2Si 2O 7)であった.それぞれの異相境界でのCTE差は1×10 ?6 K ?1以内であり,先の予想が裏付けられた.2.4生成反応の速度論La 2SiO 5/La 2Si 2O 7拡散対の接合界面付近に生成するc軸配向LSO多結晶体の厚みL i(m)は,加熱時間t(s)と単位時間t 0(=1s),速度定数K i,反応次数nを用いて次の式(4)で表される.L i=K i×(t/t 0)n(4)L IとL IIは,それぞれLSO(I)多結晶体とLSO(II)多結晶体の厚みである. 1500から1600℃のK iとnの値は等温加熱実験で求められた(表1). 5)すべてのn値はほぼ1/2に等しいので,全温度域でのLSO多結晶体の生成反応は拡散律速である.この反応の活性化エネルギーの値はLSO(I)とLSO(II)で等しく,ともに約200 kJ/molであった.多結晶体の厚みを比較すると, LSO(I)とLSO(II)では前者の方が厚く,例えば1600℃では[LI:L II]?[4:3](?[KI:K II])であった.式(4)を用いれば,任意の厚みの配向LSO多結晶体を得るために必要な加熱時間が求められる.例えば1600℃で厚み327.5μm(=LI)のLSO(I)多結晶体を得るには64.6時間の加熱が必要で,厚み225μm(=L II)のLSO(II)多結晶体では69.6時間を要する.3.サンドイッチ型拡散対によるc軸配向化と化学組成・結晶構造の制御La 2Si 2O 7/La 2SiO 5/La 2Si 2O 7の順番に重ね合わせたサンドイッチ型拡散対と,その順番を逆にしたLa 2SiO 5/La 2Si 2O 7/La 2SiO 5拡散対を1600℃で加熱して,化学組成と結晶構造の異なるLSOから構成される三種類のc軸配向多結晶体を作製した(図4). 5)-7)加熱した拡散対の拡散方向に垂直な両表面を均等に研磨して,中心部分から円盤状のc軸配向LSO多結晶体を取り出した.後述する方法で酸化物日本結晶学会誌第56巻第1号(2014)図4サンドイッチ型拡散対を用いたc軸配向アパタイト型ケイ酸ランタン(LSO)多結晶体の作製.(Syntheses of grain-aligned polycrystals of apatitetypelanthanum silicates.)(a)加熱した拡散対の内側にLa 9.33Si 6O 26が生成し,外側には未反応のLa 2Si 2O 7が残存する.(b)La 2SiO 5とLa 2Si 2O 7が過不足なく反応し,全体が単相のLa 9.50Si 6O 26.25に変化する.(c)加熱した拡散対の内側にLa 9.50Si 5.87O 26が生成し,外側には未反応のLa 2SiO 5が残存する.イオン伝導度を測定した後に,単結晶を取り出してX線回折データを収集し,結晶構造を精密化した.サンドイッチ型拡散対では, 2カ所の接合界面からLSO結晶の核生成・成長が起こる.そのためLa 2SiO 5/La 2Si 2O 7型拡散対と比較して,同一の加熱時間で2倍の厚みのLSO多結晶体が得られる.3.1 La 9.33Si 6O 26組成の配向多結晶体100時間加熱したLa 2Si 2O 7/La 2SiO 5/La 2Si 2O 7拡散対試料(図4a)を,拡散方向に平行に切断して薄片を作製し,偏光顕微鏡で微細組織を観察した(図5). 5)内側のLa 2SiO 5全体は,外側のLa 2Si 2O 7からSiO 2成分が十分に供給されて, LSO(I)多結晶体に完全に置き換わる一方で,最も外側には未反応のLa 2Si 2O 7が残存した.その結果「La 2Si 2O 7/LSO(II)/LSO(I)/LSO(II)/La 2Si 2O 7」の積層構造が形成されていた. LSO(I)多結晶体の厚みは655μm45