ブックタイトル日本結晶学会誌Vol56No1

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日本結晶学会誌Vol56No1

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日本結晶学会誌Vol56No1

福田功一郎図1La 2O 3?SiO 2二成分系状態図.(Binary phase diagramin the system La 2O 3?SiO 2.)Toropovら(1962)9)の状態図を一部変更.異なっており,それらは式(1)を分解した次の式(2)と(3)で表される.図21600℃で25時間加熱したLa 2SiO 5/La 2Si 2O 7拡散対の偏光顕微鏡写真.(Polarized light micrograph ofLa 2SiO 5/La 2Si 2O 7 couple annealed at 1600℃for25 h.)矢印はポーラライザー(P)とアナライザー(A)の振動方向を示す.アパタイト型ケイ酸ランタン(LSO)は光学的一軸性で光軸とc軸が一致する.LSO柱状結晶粒子はほぼ対角位にある.La 2SiO 5側:(14+3x)La 2SiO 5+(4-3x-3y)SiO 2→3La 9.33+2xSi 6?yO 26+3x?2y(LSO(I))(2)La 2Si 2O 7側:(14+3x)La 2Si 2O 7-(10+6x+3y)SiO 2→3La 9.33+2xSi 6?yO 26+3x?2y(LSO(II))(3)接合界面のLa 2SiO 5側とLa 2Si 2O 7側に生成したLSOを,それぞれLSO(I)とLSO(II)で表す. La 2SiO 5側ではLa 2Si 2O 7のSiO 2成分が一方的に流入してLSO(I)が生成し, La 2Si 2O 7側のLSO(II)結晶内部には流出したSiO 2成分量に相当する空孔が生じる. 8)接合界面を挟んだ物質移動の不均衡は,金属学でカーケンダル効果10)として知られている.2.2配向組織と化学組成1600℃で25時間加熱した拡散対試料を,拡散方向に平行に切断して薄片を作製し,偏光顕微鏡で微細組織を観察した(図2). LSO(I)とLSO(II)の領域は直消光を示す柱状結晶粒子が配向しており,全体がほぼ同時に消光する.LSOは光学的一軸性で,光軸とc軸が一致するので, LSOの柱状晶はc軸に平行に配向している.同一条件で加熱した拡散対試料を,拡散方向(柱状結晶の伸長方向)に垂直に切断して鏡面研磨し,露出したLSO(I)多結晶体表面からのX線回折パターンを収集した(図3).ランダム配向LSO多結晶体の回折パターンと比べ,前者は00l反射(l=2と4, 6)が顕著であり, LSO(I)多結晶体のc軸は拡散方向に沿って高配向していることが確認できた.ロットゲーリング法11)で算出した配向度は0.90に達する.一方, a軸方向の配向は確認できなかった. 12)電子線マイクロアナライザ(EPMA)でLa/Siモル比の値を, LSO(I)/La 2SiO 5境界からLSO(II)/La 2Si 2O 7境界まで拡散方向に沿って求めたところ, 1.600(3)から1.558(6)図3c軸配向したアパタイト型ケイ酸ランタン(LSO)多結晶体のX線回折パターン.(X-ray diffractionpattern of highly c-axis-oriented apatite-type lanthanumsilicate polycrystals.)ランダム配向LSO多結晶体の回折パターン(差込図)と比べ, 00l反射(l=2と4, 6)が著しく強い.まで単調に減少した. 5) La 9.33Si 6O 26(x=y=0)のLa/Si値は1.556なので, La 2Si 2O 7に接する(1600℃でLa 2Si 2O 7と平衡に共存する)LSOには過剰なLa 2O 3成分やSi席の欠損はないと予想される.一方,生成したLSO多結晶体のLa/Si値を平均すると1.579(=(1.600+1.558)/2)になり,y=0を仮定すれば組成式La 9.47Si 6O 26.21(x=0.07)が得られる.このLSOには格子間に過剰な酸化物イオンの存在が示唆される.2.3異相境界における熱膨張差「c軸配向LSO(I)多結晶体とランダム配向La 2SiO 5多結晶体の境界」,および「c軸配向LSO(II)多結晶体とランダム配向La 2Si 2O 7多結晶体の境界」付近には,光学顕微鏡で亀裂は観察されない(図2).そのため,これらの異相境界では熱膨張係数の差が小さく,冷却過程で発生する熱応44日本結晶学会誌第56巻第1号(2014)