ブックタイトル日本結晶学会誌Vol56No1

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日本結晶学会誌Vol56No1

日本結晶学会誌56,43-48(2014)最近の研究からc軸配向アパタイト型ケイ酸ランタン多結晶体の作製と酸化物イオン伝導名古屋工業大学大学院工学研究科福田功一郎Koichiro FUKUDA: Syntheses and Oxide-Ion Conductivity of Highly c-Axis-OrientedPolycrystals of Apatite-Type Lanthanum SilicatesWe have successfully prepared the three types of highly c-axis-oriented polycrystallinematerials of lanthanum silicate apatite(La 9.33 Si 6 O 26 , La 9.50 Si 6 O 26.25 and La 9.50 Si 5.87 O 26)by isothermalheating of the diffusion couples consisting of La 2 SiO 5 and La 2 Si 2 O 7 at 1873 K for 50 ?100 h. The resulting polycrystals were subsequently characterized using polarizing microscopy,X-ray diffration and impedance spectroscopy. The annealed couples were mechanically processed,and the thin-plate electrolytes consisting of the grain-aligned polycrystals were obtained. Theoxide-ion conductivity along the c-axis of oxygen hyper-stoichiometric apatite, La 9.50 Si 6 O 26.25 ,was ca. 2.5 times higher than that of oxygen stoichiometric apatite, La 9.33 Si 6 O 26 , at 723 ? 973 K.The polycrystalline material of Si-deficient apatite, La 9.50 Si 5.87 O 26 , showed, among the three typesof apatite polycrystals, the highest conductivity above 850 K; the conductivity at 873 K was4.2×10 ?2 S/cm.1.はじめに固体酸化物形燃料電池(SOFC)は,コジェネレーションやガスタービンとのハイブリッド発電に適したシステムで,家庭用の分散型電源としての利用以外に,自動車や航空機の補助電源や携帯用発電装置としての応用も検討されている.最近実用化されたSOFCは電解質にイットリア安定化ジルコニア(YSZ)を使用しており,作動温度が比較的高い(650~750℃).そのため周辺部材は高価な耐熱合金が必要であり,さらに装置の起動終了に伴う熱応力による電池セルの劣化が深刻な問題である.作動温度を低温化(600℃付近)できれば,より安価なステンレスが使用でき,長寿命化が図れるので, SOFCの低温作動化が喫緊の課題である. 1)結晶構造に著しい異方性をもつ希土類ケイ酸塩酸素アパタイト(空間群P6 3/m,光学的一軸性)の酸化物イオン伝導性は,中山ら2)によって1995年に初めて報告された.なかでもアパタイト型ケイ酸ランタン(LSO)は,結晶中の酸化物イオンがc軸方向に沿って容易に移動し,比較的低い酸素分圧下や600℃付近でも高い酸化物イオン伝導度を示す. 3)さらに化学的に安定で電子伝導性がほとんどないなど, SOFC電解質への応用が期待されている.しかし結晶方位がランダムな多結晶体では,その潜在能力を十分に発揮することはできなかった.セラミックスの機能を最大限に発揮させるためには,焼結体を構成する個々の粒子の結晶学的な方位を揃えるこ日本結晶学会誌第56巻第1号(2014)と(配向化)が有効である.そのため種々の機能性材料に対して,多様な結晶配向セラミックスの製造方法が提案されている.従来技術では製造過程でテンプレート粒子を用いたり,スラリーを磁場中に静置するなど,複雑なプロセスや特殊な装置が必要である. 4)著者らはLa 2SiO 5とLa 2Si 2O 7からなる拡散対を空気中で加熱する反応拡散法で, LSOのc軸が高配向した結晶配向多結晶体の作製に成功した. 5)-8)本稿では一般式がLa 9.33+2xSi 6?yO 26+3x?2y(xとyはそれぞれ過剰なLa 2O 3成分量とSi席の欠損量を表す)7)で表されるLSOのc軸配向多結晶体の作製,および酸化物イオン伝導性と結晶構造との関係を解説する.サンドイッチ型拡散対の積層順序と各層の厚みを適切に設定することで,高配向化に加えてLSOの結晶構造と化学組成を操作できる.2.反応拡散によるc軸配向LSO多結晶体の作製2.1生成反応とカーケンダル効果LSOはLa 2O 3?SiO 2二成分系状態図(図1)9)に示されるとおり, La 2SiO 5とLa 2Si 2O 7の間に安定領域が存在する.そのためLa 2SiO 5/La 2Si 2O 7拡散対を高温下で加熱すると,接合界面付近にLSOが式(1)のとおりに生成する.(10+6x+3y)La 2SiO 5+(4-3x-3y)La 2Si 2O 7→3La 9.33+2xSi 6?yO 26+3x?2y(1)この反応は,接合界面を挟んだLa 2SiO 5側とLa 2Si 2O 7側で43