ブックタイトル日本結晶学会誌Vol56No1

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日本結晶学会誌Vol56No1

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日本結晶学会誌Vol56No1

X線自由電子レーザーを用いた非結晶粒子のコヒーレントX線回折イメージング図3SACLA-BL3でのXFEL-CXDI実験風景.(A snapshotof XFEL-CXDI experiment at BL3 of SACLA.)ブレード開口を最適化し, Dual検出器前に置いた2×2 mm 2のビームストップで透過X線を除くと小角分解能約500 nmが達成され, 1000 nmを超える粒子の極小角スペックルを測定して位相回復が可能となっている.2013年7月期までは,真空ポンプやデータ収集用電子機器(Data AcQuisition:DAQ)システムが熱源となり,ハッチ閉状態でハッチ内温度が外気温よりも約4℃上昇した.そのため,試料交換や装置調整時のハッチ開放で大きな温度変化が生じ,集光ビーム位置やプロファイルが影響を受けた. 2013年12月の実験では,集光装置の恒温化や検出器およびDAQシステムの水冷化,真空ポンプのハッチ外設置によって,ハッチ内の恒温化とビーム形状および位置安定性が改善された.入射強度が10 10?11 photons/1?4μm 2 /pulse程度のX線パルスを照射すると,照射位置にある原子団がクーロン爆発で消失するだけでなく,その周辺15~20μm程度範囲の試料粒子が爆散の影響を受ける. 19)このため,加速器パルスに同期した30~50μm/pulseステップでの試料板の並進移動によって,照射野への試料粒子供給を実現している.照射領域が消失するにもかかわらず,回折パターンから標準試料の電子密度が回復されることから,ごく短時間のうちに原子内電子が双極子放射を生じ,原子が壊れる前に回折現象が生じている(diffraction before destruction)ことが明らかとなっている.4.1回折強度データ処理と像回復現在,数日間のビームタイムで数万枚の回折パターンが日本結晶学会誌第56巻第1号(2014)得られ,試料粒子にX線パルスがヒットする率は,粒子散布密度に応じて20~100%を推移している.このように膨大な回折データを高速かつ自動で処理すべく,以下の機能をもつデータ処理ソフトウェア“四天王”が開発された. 15)(1)あらかじめ各試料の測定前に得た検出器の暗電流強度を各回折パターンから引き去り,十分な小角強度をもつものをヒットパターンとして抽出する.(2)ビームタイムの最初に立方形状酸化銅単粒子の回折パターンを関数近似し,各検出器でのビーム中心位置や検出器の相対回転角を決める.(3)小角領域回折パターンについてFriedel則による中心対称性を評価し,先に決定した検出器中心付近で,回折パターンごとに微小に搖動するビームの位置を精密化する.(4)OctalとDual検出器のパターンを1つに統合する.(5)統合パターンのトリミングとビニング処理後,HIO-SWアルゴリズムにより電子密度像を回復する. 16),28)このソフトウェアの整備により,ラスタースキャン測定終了後ただちに,像回復までの処理を自動で行うことができるようになった.高計算コストルーチンが並列化されているので, SACLA-HPC計算機上では,回折パターン1000枚/15分で位相回復までの処理が可能である. 2013年12月には,入力パラメータなどを極力減じたGraphicalUser Interfaceによって運用され,処理結果の統計や位相回復画像に容易にアクセスできるので,実験中の試料作製へのフィードバックが可能となっている.4.2非結晶粒子の構造解析の現状われわれは,集光ビーム強度と式(1),(2)に従い,大きさが100 nm~1μm程度の金属ナノ材料粒子や生体粒子をSACLA-CXDI実験の測定対象としている.得られた回折パターンのvisibility 29)は1に近く,集光XFELビームがほぼ完全な空間コヒーレンスをもつと考えられた.多くの場合,金属ナノ材料粒子での分解能は10 nmを超える程度,散乱断面積の小さな生体粒子は30 nm程度の分解能まで回折パターンが観測される.例えば, 2013年12月に実施した7シフトの実験(1シフト=12時間)では,日々のビーム集光状態測定(約1時間)や線形加速器トラブル中の待機時間(約17時間)などを除き,約59時間をXFEL-CXDI測定実験に利用した. 86種類の試料について391回のラスタースキャン測定を実施し,全部で39,834の回折パターンを取得した.試料粒子へのX線パルスのヒット率は平均して60%で,われわれが解析に足ると判断したのは9,827のパターンであった.SPring-8でのCXDI測定と比べ,短時間に膨大な回折パターンが収集可能なSACLAの特徴を活かせば,サブミクロンサイズの金属ナノ粒子個々の内部組織を10 nm以上の分解能で可視化しながら,粒子サイズ分布も明らかにするという複合的な構造解析が可能である15),30)(図4).例えば,特定条件下で作製した銀ナノキューブと,それを出発物質として創成される金/銀ナノボックス粒子について,31