ブックタイトル日本結晶学会誌Vol56No1

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概要

日本結晶学会誌Vol56No1

中迫雅由,苙口友隆,関口優希,小林周,橋本早紀,白濱圭也,山本雅貴,高山裕貴,米倉功治,眞木さおり,引間孝明,高橋幸生,鈴木明大,松永幸大,乾弥生,登野健介,亀島敬,城地保昌,犬伏雄一,星貴彦ることから,両施設で共通したスキームで実験操作が可能な氷包埋法で試料を調製し,低温保持してX線照射する方法を採用することとした.3.2クライオ試料固定照射装置“壽壱号”われわれは,“壽壱号”と命名した低温試料固定照射装置を開発してきた(図2). 19)この装置では,あらかじめ支持膜上に散布凍結固定後に液体窒素中に保存した試料粒子を,低温冷却試料台に搬送し,ゴニオメータで試料位置を操作して照射実験を行う.開発にあたっては,タンパク質結晶の低温X線回折実験技術20)や湿度制御X線回折技術, 21),22)低温電子顕微鏡の試料作製技術, 18)低温物理学実験技術23)などを援用した.壽壱号では, 10 ?4 Pa程度に保たれた真空槽内に低温凍結試料を冷却保持しながらX線照射するための液化ガス溜め(ポット)24)を真空槽中央に内蔵している.ポットには,真空槽上部に搭載されたクライオスタットから高インピーダンス・キャピラリーを介して液体窒素が供給され,真空ポンプ接続した負圧下での蒸発冷却効果によって66 Kに保持される.ポットは, 2段の断熱材料を介して室温動作ゴニオメータに接続され,試料の並進(x, y, z各軸のストローク3 mmで位置再現性100 nm)と回転(-80~+60°)が可能となっており, 66 Kでの試料位置再現性は<400 nmであった.ポット上流10 mmの位置には, L字型Siブレード2枚を設置し,極小角度領域に侵入する上流からの妨害散乱を除去している.真空槽と直線導入機は精密定盤上に搭載され,入射X線ビームに対して位置調整が可能である.また,装置下流フランジには試料位置を視認するための望遠鏡と検出器との間を結ぶ真空パスが接続される.装置機械要素の動作軸制御は1台のPCから制御される.3 mm外径のピンホール試料板などに張り付けた炭素薄膜や炭素蒸着窒化シリコン膜に湿度制御環境下で試料粒子を展開し,余剰な水や溶媒を除去後に液体エタンで急速凍結する. 22)試料用板は液体窒素中で専用ホルダーに固定され,結露および昇温防止手動キャリアー“風鈴火山”によって,真空槽に隣接したエアーロックに設置される.ホルダーは,掴み機構を備えた直線導入機によって低温ポットに搬送される.エアーロックには2つのゲートバルブがあり,ホルダー装填作業時の大気開放操作は装置本体とローダー部の真空に影響しない.試料装填は,ユーザーフレンドリーなタッチパネル式制御ソフトウェアによって簡便な操作が可能となっている.4.SACLAでのX線回折イメージング実験図2壽壱号19)を用いた低温XFEL-CXDI実験の概要.(A schematic illustration of cryogenic XFEL-CXDIexperiment using the KOTOBUKI-1 apparatus.)(A)試料作製,搬送,測定までの手順と装置.(B)SACLAのBL3にてXFEL-CXDI実験中の壽壱号と検出器.壽壱号を用いたSACLAでの低温XFEL-CXDI実験は,BL3 25)の実験ハッチ3内にて行われている(図3). K-B集光光学系26)下流1.5 mの集光点に試料が位置するように壽壱号を設置し,試料から1.6 m下流に高角領域(7~210 nm)の回折パターンを記録するMPCCD-Octal検出器27)を, 3.2 mに小角領域(80~500 nm)を記録するMPCCD-Dual検出器を配している(図2B).式(1)の回折強度の波長依存性とMPCCD検出器量子効率の波長依存性を考慮して, 5.5 keVのX線を用いている.検出器系全体のダイナミックレンジ確保のため,試料の散乱断面積に応じて, Dual検出器前に15~100μm厚さのアルミニウム箔を挿入し, Dual検出器へ到達する回折X線強度の減衰を図っている.試料下流のPINフォトダイオードを用いることで,壽壱号内でナイフエッジ・スキャンによるビームプロファイル観察が可能である.試料直上流のSi30日本結晶学会誌第56巻第1号(2014)