ブックタイトル日本結晶学会誌Vol56No1

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日本結晶学会誌Vol56No1

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概要

日本結晶学会誌Vol56No1

パルスレーザーによる金属表面の機能創製とSACLAによる実時間観察図10回折X線パターン.(Pattern of diffracted X-ray.)(a)レーザー照射前(Pre-shock),(b)レーザー照射後30 ns(in-situ).図12回折X線パターン.(Pattern of diffracted X-ray.)(b)レーザー照射後20 ns(in-situ),(c)(b)の一部を拡大.図11プローブ時刻におけるサンプル内の応力分布.(Stress distribution in the sample at probe timing.)12 ns後の回折パターンをレーザー照射前と比較すると,矢印を付した一部の回折スポットが高角側にシフトしていることがわかる. 12 nsは圧縮の応力波の先頭がX線侵入深さに到達する時刻に相当するため,これらの回折スポットに対応した結晶粒は, X線侵入深さより深い位置にあることが推測される.また,これらの回折スポットは点状の鋭いスポットから大き目のスポットに変化しており,回折を起こしていた結晶粒に応力波による局所的な変形や亜粒界が生じたためと考えられる.16 nsは応力波が厚さ0.1 mmの試験片の裏面に到達する時刻に対応し,回折パターンの変化から,応力波による結晶粒の微細化と圧縮ひずみ生成の様子(回折スポットの高角側へのシフト)が見て取れる.20 nsは圧縮の応力波と表面で反射して位相が反転した引張の応力波が打ち消しあう時刻に相当する.このため,各回折スポットは無応力の回折線位置に現れている.また,析出物の1つであるMg 5Si 6に対応した回折スポットが矢印の位置に観測されている(図12).応力波による動的析出の可能性も考えられるが,結晶粒の回転などによる可能性もあり,詳細な検討が必要である.30 nsは, X線侵入深さより深い位置を引張の応力波が伝播している状況に対応する. Al(200)の回折は塑性変日本結晶学会誌第56巻第1号(2014)図13一次元回折X線パターン.(One dimensional patternof diffracted X-ray.)(a)レーザー照射前(Pre-shock),(b)レーザー照射後20 ns(in-situ).形によりスポットが拡大しているが,回折角はほぼひずみがゼロの位置に対応している.一方fcc構造のすべり面に対応するAl(111)については,回折スポットは拡大しているが,スポット位置は低角側にシフトしており,引張の応力状態にあるものと考えられる.MPCCDで観測された二次元の回折プロファイルを積分し,一次元の回折プロファイルに変換した例を図13に示す.この実験では, XFELのエネルギーを11 keVとして実験を行った.また,より鋭い回折プロファイルを得るため,モノクロメータを使用してエネルギー幅を約1 eVまで狭めた. Al(111)およびAl(200)の20 ns後の回折ピークは,レーザー照射前と比較して幅が大きく広がっており,応力波によるひずみの導入が示唆される.また,Al(200)と比較してAl(111)の回折ピークはより大きく高角側へシフトしている.なお, Al(111)の回折ピークはレーザー照射前の初期位置にも弱く現れており,応力波25