ブックタイトル日本結晶学会誌Vol56No1

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日本結晶学会誌Vol56No1

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概要

日本結晶学会誌Vol56No1

パルスレーザーによる金属表面の機能創製とSACLAによる実時間観察導入する.SUS304にレーザーを1パルス照射したときの衝撃波の伝播を有限要素法(FEM)で解析した結果を図2に示す.レーザーの照射条件は,パルスエネルギー200 mJ,照射スポット径0.8 mmである.解析により求めたレーザー照射後の残留応力深さ分布を実験結果と比較して図3に示す. 2)レーザーパルスの照射によりSUS304の表面に高い圧縮の残留応力が発生し,レーザーパルスを繰返し照射することにより,その効果がより深くまで及ぶことがFEM解析により理解できる.レーザーピーニングによる圧縮残留応力の導入メカニズムは,上述のように連続体力学に基づくFEM解析でほぼ理解できたと考えている.しかしながら,金属内部の衝撃波の伝搬はこれまで直接観察する手段がなく,シミュレーションによる評価に頼っている. SACLAにおいて実時間その場X線回折が実現すれば, FEM解析の妥当性の検証が可能となる.また,結晶粒微細化や析出,相変態などミクロな強化機構については連続体力学による取扱いが難しいため, SACLAやSPrirng-8による原子レベルでの観察が望まれる.3.実時間その場X線回折3.1実験レイアウトおよび実験条件レーザーパルスの照射によるアルミニウム合金の組織変化を観察するため,実時間その場X線回折をSACLAの硬X線ビームライン(BL3)にて行った.試験体および回折計の構成を図4および図5に示す.試験片は厚さ0.1mmのA6061溶体化処理材(A6061-ST)とし,真空グリースにより厚さ10 mmのアクリル板に固定した.今回の実験では,水の代わりにアクリル板をプラズマの閉じ込め媒質として使用した.励起(ポンプ)用のレーザーにはNd:YAGの第2高調波を使用した.シングルパルス(波長532 nm,パルス幅8 ns,エネルギー400 mJ)を焦点距離150 mmのレンズで1.5 mm径に集光し,アクリル板を通して試験片に照射した.このとき発生するプラズマの圧力は数GPaである.プローブ用のXFEL(エネルギー10 keV,波長0.124 nm)はコリメータで200μm×200μmに整形し,励起用レーザーによる熱影響がない試験片の裏面に照射した.試験片は16度傾けて設置し(ω=16°),回折X線を二次元検出図2衝撃波伝播シミュレーション.(Simulation of shockwave propagation.)SUS304の20%冷間圧延材の面内方向応力分布(σR).図4試験体の構成.(Sample structure.)図3残留応力の深さ分布.(Depth profile of residualstress.)実験とシミュレーションの比較.図5回折計の構成.(Structure of diffractometer.)日本結晶学会誌第56巻第1号(2014)23