ブックタイトル日本結晶学会誌Vol56No1

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日本結晶学会誌Vol56No1

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概要

日本結晶学会誌Vol56No1

超短パルス粉末X線回折による光励起ピコ秒構造相転移計測技術の開発図4(a)準安定Ge 2Sb 2Te 5結晶相のNaCl型単位格子と(b)Ge-Te原子間の結合距離の差による, Te原子の八面体中心のGe原子の<111>方向への変位の様子.((a)NaCl-type unit cell of Ge 2Sb 2Te 5 metastable phase and(b)displacementtowards<111>direction of a Ge atom at the center of Te octahedron casued by the difference ofGe-Te bond distances.)て,図4bに示すTe原子の八面体位置の中心にあるGe原子は,実際には<111>方向に少しずれた位置を占有している.これにより励起光レーザーを照射した場合,結合距離の長いGe-Te結合が優先的に切断され,その結果発生するGe原子の<111>方向への変位の増大が,トリガーになり結晶からアモルファスへの高速な相転移が起こるというような予想がなされたりしている. 25)われわれは,このような原子間の化学結合の不均一が内在するGe-Sb-Te系材料に興味をもち,フェムト秒励起光レーザーで照射した後に起こる高速な結晶構造の変形の時間変化を超短パルス粉末X線回折で測定した.図5には,フェムト秒励起光レーザーの照射前と,照射してからある遅延時間後のGe 2Sb 2Te 5準安定相の回折強度プロファイルの変化を遅延時間ごとに示した.照射初期の時間領域においては,照射前後の回折プロファイルに変化は見られないが, 20 ps付近を境として111, 200両回折ピークともに大きく低角にシフトし,強度の減少が観察される. Ge 2Sb 2Te 5準安定相の200回折ピークの22 ps以降の形状変化からもわかるように,回折ピークの形状が大きく変化しながらピーク位置を変えながら変化するのがわかる.これらの回折ピークの遅延時間による変化を,測定に用いた3つの回折ピーク111, 200, 220で比較してみる.図6では異なる3つの回折の面指数での格子面の膨張率の変化を,次式を使って結晶面間隔で規格化し比較してある.?ddhklhklλλon?2sinθhkl2sinθ=λ2sinθoffhkloffhkl(3)図6で示した格子膨張は, 20 mJ・cm ?2で励起した場合日本結晶学会誌第56巻第1号(2014)図5フェムト秒レーザー照射後のGe 2Sb 2Te 5結晶の111と200反射のX線回折プロファイルの遅延時間変化.(X-ray diffraction profiles of 111 and 200reflections after various delay times in Ge 2Sb 2Te 5crystal induced by femtosecond laser irradiation.)実線はレーザー照射後,グラフ中に示した遅延時間後の回折プロファイルであり,点線は照射前のプロファイルである.の比較的早い時間領域での変化を表している.なお,この図において,励起レーザーとXFELの時間の原点合わせに, 20 ps以下のオフセットが存在することを考慮すると,この図で重要なのは時間軸の絶対値ではなく,遅延時間に19