ブックタイトル日本結晶学会誌Vol56No1

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日本結晶学会誌Vol56No1

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日本結晶学会誌Vol56No1

松原英一郎,徳田一弥,河口智也,山田昇表1パルスX線光源の比較. 15),16)(Comparison of some characteristics of pulse X-ray sources.)線源パルス幅フォトンエネルギー繰返し数X線強度レーザープラズマ約200 fsターゲット物質の特性X線(例えば, CuKα, 8 keV)1 kHz~10 6 cpsレーザースライス約200 fs1~10 keV1 kHz~10 7 cps / 0.1%b.w.シンクロトロン約50 ps1~100 keV0.1~1 MHz~10 12 cps / 0.1%b.w.XFEL10~100 fs1~15 keV約100 Hz10 12 cps / 0.1%b.w.*0.1%b.w.は, 0.1%エネルギーバンド幅の意味.放射光の単色化に一般的に用いるSi 111モノクロメータのバンド幅に相当.図1ポンプ・プローブ超短パルスX線回折測定のための測定配置.(A schematic diagram of experimental setups inpump-probe ultra-short pulse powder X-ray diffraction.)のパルス光源を用いることで5桁近く上がることによって,測定試料は単結晶に限定する必要がなくなり,粉末や多結晶試料も用いることができるようになった.このことに加えて,粉末や多結晶試料を用いることができるようになり,光励起による構造変化の結晶方位依存性を,同一試料で同時に測定し議論できるようになった.特に熱的励起過程ではなく,非熱的な励起過程での構造変化は,熱膨張に見られるような格子の等方的な変形ではなく,結晶中の原子間の化学結合の違いに起因する結晶方位依存性を反映した格子変形が起こると考えられる.したがって,われわれはXFELの高強度・超短パルス性を用いた粉末X線回折法を開発し,フェムト秒レーザー照射後,ピコ秒領域で発現する非熱的過程,そしてそれらが熱的過程へ遷移していく様子を実験的に観察するための測定技術開発に取り組んでいる.2.SACLAでの光励起超短パルス粉末X線回折実験われわれがSACLAのBL3-EH2で行っている超短パルスX線回折実験に用いる光学系および装置の配置を図1に示す. 17) BL3-EH2は, Kirkpatrick-Baez(K-B)ミラーを設置しているEH3よりもスペース的に余裕があり,集光を用いる必要のないポンプ・プローブ実験を行うわれわれの実験には適している.高次光をミラーで除去したバンド幅が約50 eVの準白色X線を, EH2内に設けたSi 111二結晶モノクロメータ(?E/E~0.1%)で単色化して測定に用いる.この二結晶モノクロメータの1つめのSi結晶には, Bragg型ビームスプリッターと呼ばれる特殊なモノクロメータを用いることで,入射X線の一部がモノクロメータ結晶を透過するように設計されている.この透過したX線は,後で述べるXFELパルスと励起レーザーの遅延時間の揺らぎ(ジッター)の補正に用いられる.回折強度の測定には, SACLA施設で開発されたMPCCD(Multi-Port Charge Coupled Device)single sensor検出器を用いる. 18),19)この検出器は,重量が数kg程度であるため,縦型ゴニオメータの2θアームに取り付けて使うことができ,結晶方位の異なる複数の回折ピークの測定を行うわれわれの目的には適している.実験に用いるXFELの波長と,試料と検出器の距離(カメラ長)によって一度に検出できる角度範囲が決まる.例えば, 10 keVの入射X線エネルギーを用いて,カメラ長を約200 mmに設定すると,一度に約10°の角度範囲を測定することができ,複数の回折ピークを一度に捉えることもできる.非熱的過程での結晶構造変化の測定には, XFELからの単一パルスによる回折強度測定(シングルショット回折測定)と励起用フェムト秒光レーザーとを組み合わせたポンプ・プローブ測定が必要である.きわめて強い回折強度を得ることができる単結晶を用いた測定の場合,シングルショット回折測定が可能であり, Kirkpatrick-Baez(K-B)ミラーを用いて集光させたパルス光源を用いて,試料が破壊される前に回折強度の測定を終了させる20)ことで,より高16日本結晶学会誌第56巻第1号(2014)