ブックタイトル日本結晶学会誌Vol56No1

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日本結晶学会誌Vol56No1

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概要

日本結晶学会誌Vol56No1

X線自由電子レーザー施設SACLAの概要2.2ビームラインシステムと光性能アンジュレータが生成したXFEL光は,実験研究棟の光学ハッチ内のビームラインにおいて,実験ごとに最適な条件に加工され,ビーム特性の診断が行われた上で, 3章で述べる実験ステーションに導かれて利用実験が行われる.さらに下流には,相互利用実験施設が配置され,SACLAからのXFEL光とSPring-8からの放射光を同時に使った実験が可能である.光学ハッチ内のビームライン基幹光学系の構成を図2に示す. 16)ビームライン光学系は,実験の目的に応じて,入射角の異なるダブルミラーシステムおよび二結晶分光器(Double-Crystal Monochromator:DCM)が選択可能となっている.図3に,これらの光学系のカバーする光子エネルギー範囲を示す.いずれを選択した場合にも,実験ハッチ内のサンプル位置でのビーム高さは一定(床面より1420 mm)に保たれるため,実験中にも容易に切り替えることが可能となっている.ダブルミラーシステムは,カットオフエネルギーとして7.5 keV, 15 keVが選択可能である.ミラーには,コヒーレントな波面を乱さないようきわめて高い品質が求められる.このために,大阪大学の山内和人教授のグループによって開発されたElastic Emission Machining(EEM)法によって表面の超精密加工が行われている.DCMは,シリコン(111)結晶を用いて4.5~30 keVの範囲で光子エネルギーの走査が可能である. DCMのエネルギー分解能は?E/E=1×10 ?4であり, XFEL光のスペクトル幅?E/E~5×10 ?3に対して数十分の一を切り出す.その他の光学系としては,シリコン単結晶の固体アッテネータ(厚さ0.1 mmから3 mmまで可変)と4象限スリットが設けられており,さらに,任意のXFELパルスを選択的に利用するためのパルスセレクター, 17)ダイヤモンド単結晶を利用した移相子18)が導入されている.SACLAの光診断系について述べる. 16) XFELは,きわめて高い安定性を有する蓄積リングベースの放射光源と異なり,光特性のショットごとの変化は避けられず,ショットごとに光特性を診断するためのシステムが非常に重要である.このために,透過型の強度モニター, 19)プロファイルモニター,波長モニターなど,いくつかのビーム診断機器が光学ハッチ内に設置されている.強度計測については,理研,産総研,ドイツDESY, PTBの国際協力のもと絶対強度計測も行われ,非常に確度の高い値が得られ図2実験ホールの鳥瞰図.(Schematic view of ExperimentalHall.)図4高分解能スペクトロメータで計測したシングルショットのエネルギースペクトル.(Single-shot energyspectrum measured with high-resolution spectrometer.)図3ビームライン基幹光学系と各光学系の光子エネルギー範囲.(Beamline optics and photon energyranges.)表1SACLA BL3の光性能(2014年1月現在).(Performance of SACLA BL3(as of Jan. 2014).)1パルス当たりの光子数2e11 photons@10 keVピークパワー>30 GW強度変動10~20%(STD)基本波の光子エネルギー4~20 keV繰り返し30 Hz(60 Hz max)試料位置のビームサイズ(非集光)~300 um(FWHM)@10 keVバンド幅~50 eV @10 keVパルス長<10 fs(FWHM)日本結晶学会誌第56巻第1号(2014)11