ブックタイトル日本結晶学会誌Vol56No1

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日本結晶学会誌Vol56No1

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概要

日本結晶学会誌Vol56No1

SACLAができるまで図2 SACLAの線形加速器.(Linear Accelerator for SACLA.)周波数5712 MHzのCバンド加速管を用いた線形加速器により, 8 GeVの電子ビームを生成する.約40 MeV/mという非常に高い加速勾配で日常的に運転している.図3 SACLAの真空封止型アンジュレータ.(In-VacuumUndulators of SACLA.)SACLAでは,磁場周期18 mmの真空封止型アンジュレータが用いられている. 1ユニットが5 mのものを18台繋げて使う.電子は4 mm程度の磁極間隙を90 mまっすぐに進む.レーザー発振のためには,このときに許容される直線からのずれは数ミクロン以内である.ユーザータイムとした. 2013年以降は,徐々に総運転時間を減らしつつ,一方でユーザータイムを増やしていく方針である(図2, 3).6.SACLAの特徴SACLAは, LCLSに次ぎ,世界で2番目のX線自由電子レーザーとなったが,(i)世界最初のCompact XFELであることに加えて,(ii)第3世代放射光施設SPring-8と同一サイトにあるXFELである,(iii)XFELからのX線とSPring-8からのX線を1つの試料の同じ場所に導入することができる,(iv)SACLA線形加速器の低エミッタンス電子ビームをSPring-8に入射できる,というほかの計画中のXFEL施設にはない特徴をもっている.第3世代放射光との相補的利用は特徴あるサイエンスを産み出すことになろう.特に同一試料にマイルドなSPring-8ビームと強日本結晶学会誌第56巻第1号(2014)力なXFELビームの両方を当てる可能性は, XFELビーム照射で生成された非平衡状態の比較的低速の緩和過程をSPring-8ビームで見ることを可能にする.また, SACLAのビーム照射では試料の損傷を引き起こすため不可能なCT観察を, SPring-8を用いて低分解能で行っておいて,最後に1つだけSACLAで高分解能像を撮り,これを基に全体を三次元高分解能再構成することが検討されている.SACLAの繰り返し周波数は60 HzとLCLSの120 Hzの半分である.全系が完成すると, 1つの線形加速器から5つのFELラインとSPring-8への入射ラインに電子ビームを振り分けることになるので,等分配すると1ライン当たりでは10 Hzになってしまう.だが, SACLA線形加速器はマルチバンチ対応であるため,将来的に高速振り分けマグネットが開発されれば, 6つのラインすべてに60 Hzでビームを送ることが可能になる.しかしながら,最近6つのラインに振り分ける電子ビームのエネルギーを異なるものとする運転が検討されており,これはマルチバンチ運転が対応していない.繰り返しを増やす方法の1つとして,低エネルギー線形加速器を8 GeV加速器と並列に置くことが検討され,試験加速器を移設することでこのことを実現する計画が進行している.2012年の共同利用開始時には,低エネルギーの自然放出光ビームラインとX線自由電子レーザービームラインの2本を用意した.その後,補正予算により, 2本目のX線自由電子レーザービームラインを建設中であり, 2014年度後半には調整運転を始める.また,試験加速器を現在の自然放出光ビームラインの上流に移設して,このビームラインを軟X線自由電子レーザービームラインとして2015年から運用を始める予定である.7.SACLAの現状2012年3月の供用開始以後も, SACLAの性能は少しずつ上がっている. XFELとしては4~20 keVの領域をカバーでき, 5 keV近辺でのパルスエネルギーは0.7 mJ,10 keV近辺では0.4 mJ程度である.ピークパワーは100 GWに達し,パルス幅は10 fs以下となっている.現状では60 Hzの定格に対して, 30 Hz運転を行っている.コヒーレントX線をほぼスペックルフリーで集光するミラー光学系が設置され, 1μm径の集光ビームが普通に利用可能となっている. 14)また相互利用実験施設では,二段集光ミラーにより, 50 nm径の集光ビームが利用可能である.検出器としては, 60 Hzで読み出し可能なCCDが装備されている.8.SACLAのこれからSACLAを利用したサイエンスは順調に発展している.それらは,本特集の記事に示される.SACLAには, BL1~5の5本のビームラインが設置可7