ブックタイトル日本結晶学会誌Vol56No1

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日本結晶学会誌Vol56No1

特集:新時代の結晶学-X線自由電子レーザー日本結晶学会誌56,3(2014)新時代の結晶学-X線自由電子レーザー特集号担当:栗栖源嗣,西堀英治Genji KURISU and Eiji NISHIBORI: A New Era in Crystallography; X-ray Free ElectronLaser2014年は,近代結晶学が誕生してから100年を迎える年にあたります.約100年前,マックス・フォン・ラウエ博士と寺田寅彦博士によりX線の結晶による回折現象が確認され,ヘンリー・ブラッグとローレンス・ブラッグ父子により岩塩の結晶構造が解かれました.国際結晶学連合(IUCr)は,国際科学会議(ICSU)を通じて国際連合教育科学文化機関(UNESCO)に働きかけ,国際連合総会は, 2014年を「世界結晶年」とすることを宣言いたしました.ご存知のとおり,結晶学がこの100年の間,基礎,応用の区別なく,科学・技術の発展に大きく貢献して来たことは言を俟ちません.そこで日本結晶学会誌では,世界結晶年を迎えるにあたって, 2014年各号で特集を企画することと致しました.世界結晶年の最初の号を飾る特集として,新しい時代を切り開く光源として注目されているX線自由電子レーザーに焦点をあてました.日本が培ってきた多くの技術の粋を集めることによって,初めて完成した国家基幹技術であるX線自由電子レーザー施設「SACLA」に関する研究を活発に進められてこられた5名の先生に,各ご専門の立場から関連する記事の執筆をお願いしました.夢の光源開発に至る経緯や,設備・機器・解析技術,さらにはX線レーザーを用いた基礎・応用研究など,興味深いお話をご紹介いただいております.最近読んだ,「寺田寅彦(小山慶太著,中公新書)」によると,寺田寅彦博士が1913年に発表された論文“X-rays and Crystals, Nature (1913)”の実験現場の情景が,当時,現場に居合わせた西川正治博士の談話として臨場感をもって紹介されています.また,本紙3号3巻(1961年)に収録されているIUCr1961京都会議のOpening Addressesには, P. P. Ewald会長(当時)が,寺田博士の論文をミュンヘン理論物理研究所で読んだときの興奮した様子が綴られています. X線の回折現象が確認され,世界中で新時代の扉が開かれようとした時代でした.その後も結晶学の分野では,新しい光源の開発と歩調を合わせて,既成の概念を打ち破る新しい研究成果が次々と生み出されてきました.今まさにX線レーザーを新しい光源とすることで,これまで見ることのできなかった原子や分子の瞬間的な振る舞いや反応の素過程までも観察することが可能となりつつあります.さらには,構造解析のための結晶すら必要なく,非結晶試料によるイメージングの技術開発も急速にすすめられています. 100年前に寺田博士が初めてX線回折の実験をなされたときのように,日本の結晶学も新時代を迎えつつあるのです.今回の特集を契機に,結晶学会会員をはじめとする多くの研究者が,夢の新しい“光”を用いて新時代の結晶学研究を展開され,実験の新しいアイデアや大きなブレイクスルーを導き出されることを願っております.日本結晶学会誌第56巻第1号(2014)3