日本結晶学会誌Vol55No3

日本結晶学会誌Vol55No3 page 9/82

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概要:
日本結晶学会誌Vol55No3

表面界面に埋め込まれたナノスケール薄膜・ナノワイヤーの定量的構造研究がないことも指摘した.ポイントは,東京工業大学の工業材料研究所(当時)で作製した吸着表面の劣化を最小限にし,つくばのフォトンファクトリーBL14Bにおいてシンクロトロン回折測定を実現したことである(以下で記載する第1号装置を用いた).引き続く測定では第2号装置を用いた試料輸送システムやこれらの高真空槽を30回余り利用した.その装置を紹介する.さらに,表面吸着構造や薄膜構造への適用例を紹介する.2.3.1 GAXSW測定に用いた小型高真空槽第1号小型高真空槽はポンプや3個の円板状のベリリウム窓などが備わっている真空室A(内径φ146 mm,高さ380 mmの円筒)とベローズ,先端に試料ホルダーの付いた回転導入機が備わっている真空室Bから構成されていた.その回転導入機を手動で回して試料を粗く回転させた.またモーター駆動された直交スイベルによりX線と試料表面の角やあおり角を調節し, XY平行移動台により位置を調節した.真空槽全体は精密回転台に搭載された.入射線用窓1,反射回折線用窓2,蛍光X線用窓3の中心は同じ高さにあった.窓1から190°の角度に窓2を,窓1から85°の角度に窓3を配置した.ベリリウム窓の有効径,有効角度,厚さは,それぞれ窓1ではφ17 mm, 22°,0.2 mm,窓2ではφ44 mm, 48°, 0.4 mm,窓3ではφ23 mm,28°, 0.2 mmであった. N 2に対して排気速度16 L/sのイオンスパッタリングポンプと排気速度100 L/sのチタンサプリメーションポンプを備えていた.到達真空度は4×10 ?7 Paであった.第1号試料輸送用高真空槽は,全長1440 mm,真空室は外径63.5 mm,長さ130 mmの円筒の外形を有した. N 2に対して排気速度8 L/sイオンスパッタリングポンプを用い自動車での輸送中も真空排気した.試料移送ロッドはベローズ式の直線導入機でその先端にバイオネットソケットがあった.試料落下防止機構,φ34 mm,φ70 mmの2個ののぞき窓がついていた.真空度は1×10 ?6 Paまではゲートバルブを開けて測定したので, 10 ?7 Pa台の到達真空度と推測した.第2号小型超高真空槽,第2号試料輸送用超高真空槽については報告した. 37)小型超高真空槽は内径130 mm,高さ195 mmであった.そこにφ152 mmのフランジを介し半球型のベリリウムドーム(φ104 mm,厚さ0.5 mm)が付いていた. 300 L/sの排気速度を有する磁気浮上型ターボ分子ポンプと300 L/sのチタンゲッターポンプにより1×10 ?8 Paの真空度に達していた.この真空槽の下に直交スイベル, XY平行移動台があり,これらが精密回転台に搭載されていた.試料は水平軸周りに90°回転できた.測定の際,試料表面は水平になるように置かれた.熱分解グラファイトヒーターにより試料温度は1373 Kまで可能な設計であった.実際,放射温度計で試料表面は最高温度日本結晶学会誌第55巻第3号(2013)図5回折測定用小型高真空槽(白丸内)と試料輸送用高真空槽(黒丸内).(Two pairs of an high vacuumchamber and a transfer vessel for GASXW measurements.)(a)フォトンファクトリーBL14B実験ハッチ内の精密回転台上に設置された第1号小型高真空槽,(b)実験ハッチ外で第1号試料輸送用高真空槽から第1号小型高真空槽に試料を移す作業中,(c)実験ハッチ内で試料を移す作業中の第2号超高真空槽と試料輸送用超高真空槽.1103 Kに達した.ポンプを含めた総重量は45 kg重であった.第2号試料輸送用超高真空槽は全長1040 mm,重量15 kg重であった.排気速度16 L/sのノーブルポンプを備え,到達真空度は1×10 ?7 Paより良好であった.磁気カップリング方式の直線導入機を用い,磁気トランスファ部は680 mmであり,その先端部はバイオネットソケットになっていた.2.3.2 Si(001)単結晶上のAs吸着原子の構造解析Si(001)単結晶上の吸着Asは1×2, 2×1ドメイン*5からなっていたが,試料表面にほぼ垂直な(220),(22 _ 0),(040)について, GAXSW測定を行いAs-Asダイマーボンド長,ドメイン比などを解析した. 38)その測定プロファイルを図6に示す.式(18)を各回折に適用すると,次式が得られた.R = A+ηGsin( v + v + v )f i h c dただし, G = 2 | Rhexp( ivh) |×| 1+R exp( iv )exp( i4πKΦz) | E2SsOO(20)1×2ドメイン比M 1, 2×1ドメイン比M 2と平均二乗2根熱振動振幅< u || >を含むηは次式で表現される.*52×1ダイマーの結合方向と(220)網平面の法線が平行.175